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俺は物心付いた頃から、根っからのネガティブ野郎だ。
おまけに卑屈で、自分が揉め事の発端にならないように、どんな事でも何となく流れに身を任せてやってきた。
それでいいと思ってた。
自分で意思を持って決めた事と言えば、進学する高校と、ダンススクールの継続、……くらいかな。
俺に見合った、普通よりちょっと良いくらいの高校に入学して正解だったし、体を動かす事は嫌いじゃなかったダンスは、どの種類もソツなく踊れるくらいにはなってる。
春香の影武者も、すっっごく大変は大変だったけど、基礎が出来てるから振付を覚えるだけで良かった、思わぬ利点もあった。
何も考えなくて良かった今までと大きく違う事と言えば、聖南の事だ。
閉じこもっていた殻を突き破ってすんなり馴染もうとする聖南の眩しさに、俺はただただ慄いた。
こんな俺なんかを、なんで好きって言うの。
おかしいよ。 どうせ、からかってるんだろ?
疑っても、疑っても、どんどん聖南は俺の中を明るく照らしていってくれて、その眩い世界に行けたらどれだけいいかと夢見た。
でも俺は、傷付くのが怖い。
その眩しい世界には、色んな物事が転がっていて、当然、良い事も悪い事もあるはずで。
ネガティブな俺は悪い事しか目に入らないから、心を守ろうとするあまりどれだけシャットアウトしようとしても、聖南の前ではそれは無駄に終わる。
俺にとって聖南は、いくら手を伸ばしても届かない、まさに星のような存在なんだ。
自分に自信がないからって理由だけでは到底片付けられない、聖南の立場を考えると、俺は隣に居ていいわけがない。
相応しくない。 この一言しか浮かばない。
だからそう簡単に、結論なんか出せるはずが無かった。
泥のように爆睡しちゃった翌日、行為の名残りである喉の痛みと下半身の鈍痛をこらえ、何事も無かったみたいに教室に入り、席についた。
目立たない俺は誰かに何を聞かれるでもなく、その周囲の反応が普通で安心する。
「葉璃、おはよう。 体調は大丈夫?」
朝のHR前の短い時間だから来ないだろうと思ってた恭也が、後ろからぬっと現れてビクッとするも、恭也はいつもこんな感じだ。
二年に上がって恭也とはクラスが別れてしまったから、腰の重い俺の元へ、こうして恭也が度々会いにやって来てくれる。
「お、おはよ、恭也。 昨日お見舞い来てくれたんだって? ごめんね、俺爆睡してた」
「寝てたね。 ……体調、悪かったの?」
「いや、普通に爆睡し続けてただけだよ」
「そっか……」
恭也は無口で、口を開いてもとてもゆっくり喋るからか、いつも会話はほとんど無く俺達の間にはのんびりとした時間が流れる。
この何を考えているか分からない恭也にさえ、俺の本質を見抜かれていたと春香から聞いて、顔を合わせるのが少しだけ恥ずかしかった。
「じゃあ俺、戻るね。 またお昼、来る」
「あ、うん。 ……ありがと」
猫背なの直せば背が高いだろうに、いつも俯きがちな恭也の後ろ姿を見届ける。
空気感が同じの恭也は、やっぱりすごく落ち着く。
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