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これまでの人生ずっと一人ぼっちだった聖南にとって、突然現れた唯一の存在。
好きだ。愛してる。
その言葉すら薄っぺらく思えてしまうほど、聖南は葉璃に執着していた。
気持ちが通った今もまだどこかで、これは自分だけの気持ちだから、それを葉璃にぶつけたところで肩透かしに終わるだろうと思っていたのだ。
とにかく、葉璃が大事で、大切で、心配なんだと伝えられれば良かったのに、まさか葉璃の方から「俺を信じられないんですか」とくるとは思わなかった。
聖南にとって葉璃は、まだまだ未熟な子どものままな気がしていた。
高校生という多感な年頃の心の成長がこれほど早いとは思いもせず、ストレートに聖南を安心させてくれた葉璃の言葉に、極小だった器は中くらいほどまで持ち直した。
聖南の気持ちを落ち着かせようとしたのか、葉璃の方から積極的に聖南の体に触れてくれたところも敗北の大きな要因だ。
「いいですよ。ヤキモチ焼かれるの、嫌な気はしないですから」
「なっ……、葉璃、ほんと言うようになったよな」
口から産まれてきただろと周囲に言わしめるほどの聖南さえたじろがせる、葉璃の言の葉。
考えて話しているわけではないところが何とも恐ろしい。
「これが多分、ほんとの俺です。……嫌いですか?」
「まさか。嫌いなわけねぇじゃん。言っただろ、俺はどんな葉璃でも好きだって」
「……言いましたっけ?」
「あぁ? 忘れてやがんな!?」
「ふふっ……」
顔を逸らして小さく笑う葉璃を抱え上げ、可愛過ぎて憎らしい恋人に優しくキスを落とすと、そのまま抱き上げてベッドルームへ向かった。
目の前の愛しい者が葉璃であるならば、中身や外見がどう変わろうと聖南の気持ちに変化は起きない。
葉璃が離れていかないと安心したら尚のこと、嫉妬深さももちろん変わるはずがなかった。
「覚悟しろよ、お仕置きは忘れてねぇからな」
「えぇ!? さっきのでチャラでしょっ?」
「んなわけあるか。葉璃の気持ちは十分伝わったし、俺も葉璃を信じてる。けどダメなもんはダメ」
「そんな〜〜。明日パーティーですよ? あんまり体痛くなったら困ります……」
「それは大丈夫だろ。今日は葉璃に動いてもらうから」
聖南は言いながら眼鏡を取り出して掛けると、口元だけでニヤッと笑った。
「……ハッ! 眼鏡聖南さん……!!」
「あ〜これじゃお仕置きになんねぇかな? また葉璃の目が♡だからなー」
「が、がんばります。……ぅわっ……」
眼鏡を掛けると一瞬にして葉璃の頬が色付き、瞳が濡れた。
そんなにメロメロになるほどこの眼鏡のどこがいいのか、聖南には未だに謎だった。
だがお仕置きと称して騎乗位で中イキさせようと目論む聖南の瞳は対して獣のようで、葉璃が着ているパーカーを脱がすと自身はゴロンと横になる。
まずは存分に、慣れない行為の前兆で恥ずかしがってもらう。
聖南のものであるという自覚を植え付けるために、葉璃にはすべてを曝け出してもらわねばならない。
「葉璃、腹に乗って」
「……はい……」
聖南は衣服を着たまま、葉璃は下着を付けたまま聖南に跨るという特異な性癖と思しき格好で、二人は濡れた視線を混じり合わせた。
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