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「俺の昔の写真、見る?」
「えっ? み、見ていいんですか」
もしかしてヤンチャ時代を見せてくれるのってちょっと興味津々に近寄ると、
「葉璃だけ、特別な」
内緒だ、と口元に指をやって、スマホを見せてくれた。
この部屋に入った時と随分空気感が変わっていて、今日ちゃんとスッキリ出来て良かったーとニコニコで画面を見たら…。
「………!!!!! ここここれ、佐々木さんでふか!?」
「あはは、葉璃、噛んでる。 でふかになってる」
噛んでしまった唇の端を抑えて、画面を凝視した。
「完全なヤンキー…じゃなくて、これ、暴走族じゃないですか!??!」
楽屋には俺と佐々木さんしか居ないのに、つい小声になっちゃうのは、この写真のインパクトが凄すぎるせいだ。
問題の昔のヤンチャとは、何十名といる派手な特攻服を着た怖そうなお兄さん達の真ん中で裏ピースを決めた佐々木さんだった。
ピシッと毎日スーツしか着ていない、髪型もごく普通の佐々木さんが、昔はこんなにロン毛で金髪で、おまけに眉毛もないなんて…。
「ま、真ん中ですよね、違いますか?」
「そうだよ。 総長やってたから」
「そ、そそ総長……」
これは現実かと思って目をゴシゴシ擦って再度画面を見るも、当然ながら何も変わらない。
裏ピースで悪ーい笑顔をキメた佐々木さんがジッと俺を見てくる。
写真でですら物凄い目力だ。
「期待通りの反応で嬉しいよ」
「これは驚きますよ!! 今の佐々木さんしか知らないんですから!」
「仲直りのしるし、な。 いっぱい困らせたお詫びに、俺の黒歴史晒します」
ふふっと笑いながらスマホをしまった佐々木さんが、俺の頭をヨシヨシと撫でた。
「…………………知りたくなかったかも…」
「あ、もしかしてまた押し付けちゃったかな?」
「……仲直りのしるしなんでしょ。 もう……まだ心臓バクバクゆってますよ……」
衝撃の過去を知って、悪いけど、佐々木さんが俺を好きだの何だのっていう話が一気に飛んで行ってしまった。
昨日はあれだけツラくて涙まで零したのに。
あの切ない時間を返してほしい。
「この事、セナさん以外には内緒ね」
「聖南さんはいいんですか?」
「いいよ。 もうこの扉の前に居るから全部聞いてると思う」
「え!?」
「それに、何故かセナさんには俺の眼力効かないんだよ」
佐々木さんが喋りながら扉を開けると、そこにはマジで衣装のままの聖南が背中を向けて立っていた。
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