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39☆ 12・仮装パーティーはお開きへ・・・
39☆ 12・仮装パーティーはお開きへ・・・
アキラも会場内へ戻る必要性を感じなかったので、ハルを連れてロビーでセナが戻ってくるのを待っていた。
向かいに座るハルはしきりにうさ耳を取りたそうに頭をいじっているが、それはカチューシャと、さらにヘアピン数本で固定しているようでなかなかうまくいかないようだ。
「耳、取りたいのか?」
「はい、もう嫌です。 早く着替えたい……」
自分で入れたピンが複雑に交差しているようで、取るのを諦めたハルはだらりとテーブルに突っ伏した。
部屋へ上がろうとしないハルは、セナに「俺に黙って着替えるな」とでも言われたのだろうか。
突っ伏している事でうさ耳がアキラの目の前にやってきたので、そのふわふわな手触りを楽しんでいると、ハルが小さな声で呟いた。
「足も痛くなってきたし……」
「足? 痛いの?」
「え、はい。 そろそろ薬の時間だから」
「薬!? ハル、どっか悪いのっ?」
どういう事かと驚いたアキラは、突っ伏したままのハルを覗き込むと、彼はきょとんとして見詰めてくる。
足が痛くて薬を飲んでいるだなんて、初めて聞いた。
「あれ…聖南さんから聞いてないんですか?」
「薬の事なんてなんにも」
「そうなんですか………」
体を起こしてよれた衣装を直すハルは心なしか嬉しそうにしているが、アキラはそんな事よりも「痛い」「薬」というワードに狼狽えて立ち上がった。
「いや、てかその薬の時間ってのが迫ってんなら、上行って飲んできたら? セナには俺から言っとく……」
ハルを部屋へ戻らせて自分はセナの元へ行こうとすると、立派な海賊様が会場内から出て来て立ち上がっているアキラに気が付いた。
「おぅ、アキラ。 葉璃知らねー?」
「ここ居るよ」
「あー? 何でお前ら二人でこんなとこいんの」
早速セナの勘繰りが始まったが、ハルは実に冷静にセナを見上げた。
「聖南さん、お話終わりました?」
「あぁ」
ひとまず部屋へ行こうにも、その事を本人に告げておかなければ、葉璃はどこ行った!と騒ぐためにハルもアキラと同じくセナに一声掛けようとしていたらしい。
ゆっくり立ち上がって、腕からぷらんとぶら下がった時計を内ポケットに仕舞い込んでいる。
その動作はアキラにとっては目の保養だった。
「俺、部屋戻ってていいですか?」
「いいけど…どした? 中はやっぱ居づらいか?」
「いえ…薬の時間だから」
「そうか、ならしょうがねぇ。 俺も行く。 痛みは?」
「少しだけ。 アキラさんに今その話しようとしてたとこで…。 あ、聖南さんはもう少し中に居てあげてください。 言ったでしょ、俺ばっか優先したらダメです」
「なっ………」
「じゃあ、俺お先に失礼します。 アキラさん、話聞いてくれてありがとうございました」
一緒に部屋へ行く気満々だったセナをピシャリと拒否したハルは、アキラに一礼して微笑み、エレベーターで本当に一人で行ってしまった。
セナと対面しただけで、あんなにも人が変わったようにしゃんとなるなんて、驚くなという方が無理だった。
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