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聖南は支度を済ませて事務所へとやって来た。
葉璃と恭也がレッスン中だろうからこっそり覗いてみようと思い、事務所ビルに併設されたスクールの方へと足を伸ばす。
居るだけでとてつもない存在感を放つせいで、スクールに入るなり様々声を掛けられたが、シーッと口元に指をやって騒ぐなと示した。
「お、居た居た」
葉璃達はボイストレーニングの真っ最中だった。
防音のせいでスタジオ内の声は聞こえないが、頑張っている姿を見て聖南もホッと安堵した。
二人に見付かって気もそぞろにさせてしまってはいけないので、聖南は声は掛けずにスクールを後にする。
聖南と葉璃は互いに多忙で、会う事はおろかなかなか連絡も取りにくくなってしまったので一目見れただけでも嬉しかった。
葉璃のレッスン終了を待って、恭也も一緒に送ってやろうと思いながら腕時計を確認すると、あと小一時間ほどで終わるのではないか。
葉璃はレッスン終了とほぼ同時に聖南に「いま終わりました」とメッセージを入れてくるので、大体の葉璃の行動の流れは分かる。
あまり会えなくても、まさに付き合っているなぁと実感できるほど毎日メッセージのやり取りは欠かさないので、安心させてくれている葉璃に聖南もワガママは言わない。
デビューまで半年を切ったからだ。
CROWNのツアー同行も課してしまったから、二人には言いしれぬ重圧がのしかかっているかもしれない。
だからこそ、レッスンは一日たりとも欠かしてはならないと思い、会えない日々が続いても聖南はデビューの日までは葉璃を見守る事に決めている。
聖南を第一に思ってくれている葉璃のように、聖南も、葉璃の現状を理解してやらなければならなかった。
大好きな葉璃の毎日が輝き続けるように、素晴らしい未来を描けるように、レッスンで学んでいる事を体に叩き込んでいる真っ只中の邪魔はしない。
「セナ、来てたのか」
最近お気に入りのブルーレンズのサングラス姿のまま、聖南は事務所へと趣き、成田のデスクの上にあったHottiを手にした時、社長に捕まった。
「おー、社長。 びびった。 なんで社長がこんなとこウロついてんの」
「いいじゃないか。 そうそう、セナ。 ちょうど良かった。 会食の日取りが決まりそうだ」
「………うわ、忘れてた」
「今日の午前に連絡があってな、今日明日にはセナに連絡しなければと思っていたところだ。 予定日をいくつか言ってきているから、私とセナの都合を照らし合わせよう」
手にしたHottiをパラパラと捲りながら、社長室へと向かう社長に続いて歩き出した。
覚悟はしたつもりだが、もうそんな時期かと、迫るその日に胸騒ぎがした。
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