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── 四月某日 ── 聖南の想い④※

 … … …  聖南は腰を動かしながら、葉璃の細まった潤んだ瞳を見詰めて考えていた。  今年の誕生日は何を送ろうかと。  件の事件で切れてしまったチェーンと同じものを購入して渡すと、例のトップを嬉しそうに通し、聖南に改めて言われずとも毎日欠かさず付けてくれている。  出来れば今年もアクセサリーがいい。  身に着けるものを渡せば、精神的にも物理的にも葉璃を縛る事が出来る。  こうしている今も、きめ細やかな色白の胸元に光るペンダントトップが、聖南の笑みを濃くさせていた。 「んん……っ……っ…、…っ…」 「葉璃、目閉じるな。 俺を見てろ」  奥を貫いて首筋を舐めると、ビクビクと体を震わせて切なく息を詰めた。  閉じられた目尻からぽろりと流れ落ちる涙を舐め取り、耳に口付けて優しく囁やけば、聖南の声に弱い葉璃は弱々しく背中を抱いてくる。  襲い来る快感を受け止めようと、葉璃の下半身に力が入ったのが分かる。  先端でじゅくじゅくと中を擦っていたが、瞳を開けない葉璃の無意識ないたずらで急に動けなくなった。  グッと押し入れば挿れられるのだろうが、これだけ奥が締まっていると万が一葉璃が痛がったらいけない。  聖南は葉璃に覆い被さっていた上半身を起こし、細過ぎる腰を両手で掴んだ。 「はるー、力抜けよ。 何やってんの」 「…っ…やっ…なにも、して…ない…っ」 「ほら、ほら、……ここまでしか入んねぇんだよ。 それどうやってんの?」 「あっ…っ、やっ…やっ……やめ…っ」  貫けるところまでゆっくり挿抜していると、自ずと葉璃の背中が仰け反るポイントを何度も擦り上げる事になる。    声を殺して泣き始めた葉璃の腰が、何かの前触れかのようにぷるぷると震えた。 「あぁ、これ? これ好き?」 「んんん…っ…んっ……せなさん…っ、んぁっ」  ベッドに手を付いて、お構いなしに先端で前立腺を擦り続けていく。  すると幾度目かのピストンの後に、喘いでいた葉璃がフッと息を詰めた。  締め上げられそうだったので、聖南はずるっと性器を引き抜きいたいけな射精を見届ける。 そして、射精してすぐの敏感な性器を扱いてやりながら、葉璃の顎を舐めた。  二回に分けて弾けた精液が、葉璃の顎にまで付着していたのだ。 「すげぇ……ここまで飛んだな」 「……はぁ……っ…はぁ……言わないで…」 「なんで。 いいことじゃん」 「どういう意味…? あっ…せなさん、っ…指…っ」 「見せらんねぇのがツライなー。 ヒクヒクしてんだよ、ここ。 分かる?」 「分かっ? 分かんないっ」 「いやぁ……これはたまんねぇ。 挿れてい? 力抜いてろよ?」  ピンク色の孔が、聖南の性器による摩擦で赤味を帯びていやらしい。  ローションで濡らした人差し指と中指を挿れてじわじわと中へ侵入してくと、内壁も入り口もその感触を確かめるように蠢いた。  先端を孔にあてがい、すぐに挿入する。  くちゅ、と音を立てたそこが、聖南の性器によって徐々に拡がっていった。  滑りは問題ないが、猛った聖南のものはいつもの如く葉璃の眉を顰めさせ、内に力みを生ませてしまって時間が掛かる。  しかし一旦抜いてしまったあとの葉璃の秘部は、慎重に再挿入しなければ強烈な抵抗に遭うのだ。 「……痛くねぇ?」 「…う、ん…っ……おっきい……」  キツい締め付けに合いながらすべてを挿入し終えると、聖南は小さく呻いていた色付く唇に噛み付いた。  いちいち発言が可愛い聖南の恋人は、必死で抑えている爆発しそうな欲望を直ちに打ち砕こうとして駄目だ。 「…ん、っ…っん、んっ……!」 「葉璃、舌出して」 「んんっっ…! ん、ん…っ……!」  甘い舌を吸い上げて絡ませ、さらに腰を動かして最奥を目指す。 力ませないように、はじめは優しく舌先を遊ばせた。  口腔内をくまなく舐めて、舌に乗った唾液を美味しく頂くと、やっと聖南は落ち着いてくる。  葉璃とは粘膜の交換さえ定番化していた。  舌出して、を合図に、葉璃は喉を開く。  聖南から注がれる唾液を受け止めて、飲み下し、さらに舌を絡ませて互いの愛を確かめ合う。 「あっ…ぅぅ…っ、ん…っ……んっ…」 「……葉璃ちゃん、明日何時?」 「…っ……明日、は…、八時…」 「りょーかい」  ならばあと二時間はいける。  聖南は、ちゅっ、ちゅっと唇と鼻先にキスを落として、葉璃の嬌声を楽しんだ。  腰を打ちつける度に揺れ動く、自身が送ったネックレスに目を奪われる。  葉璃を独占し、体を貪っている現実に我を忘れるほど興奮した。 「……っ、やっ…せな、さん…っ、早っ…やっ…だめ、…そんなに…っ」 「大丈夫。 まだイかねぇよ」 「えぇ…っ? イってよ…っ、ねぇ…せなさ、ん…っ」 「葉璃ちゃんのお願いは何でも聞いてやりてぇけど、それはイヤー♡」  あまり無茶をして翌日の仕事に差し支えては、三度目のセックス禁止令が出てしまう。  無理はさせたくない、させたくないけれど、葉璃の中は最高なのだ。  中で感じ、目に見えるすべてが愛しいと感じ、貪欲に求め続ける聖南の心と体は、まだまだ満足出来ない。  どれだけ葉璃を抱き寄せても、聖南は、葉璃が足りない。  たとえ体は繋がっていても、仕事で離れ離れになると恋しくてたまらなくなる。  心はつながってるでしょ、と葉璃は言ってくれるけれど、愛し過ぎて離れるのが絶えられなくなってきた。  日々、その想いは強くなっていく。  泣きながら聖南を抱き締めてくれるこの腕が、本当に永遠に聖南のものである保証は、正直なところ……無い。  時折大きな不安に襲われる理由は、それだ。  まだ聖南は、葉璃が足りない。  半分にも、満たない。

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