6 / 83

第6話

「薫ー、お昼一緒に食べようよっ」 「ちょっと用事あるから。」 「えー、今日も?」 「薫居ないとつまんないよー。」 それでもヒラヒラと手を振れば振り返す。 頭の良い子は好きだ。 一から十まで説明する手間がない。 足早に階下を目指した。 コンコンッ 「はい、どうぞ。 …古志くん。」 そんなあからさまに視線を逸らさなくたって良いのに まぁ、気にしないけど ずかずか相川に近づくと机の脇に押しやられたビニール袋を指指す。 「それ、頂戴?」 「え?」 「おにぎり。」 「お昼、忘れたんですか?」 スクールバックの中からお弁当箱を取り出し手渡すと、え?え?とお弁当と古志の顔を交互に見る。 その姿は小動物の様で酷い事をしたくなる。 古志は、驚いてる隙に後ろからおにぎりを奪った。 「交換ね。 いただきまーす。」 「でもっ、これ、古志くんのお母さんが古志くんの為に作ったお弁当です。 いけません。」 「俺が作った。」 「古志くんが……」 フィルムが剥かれただけのおにぎりの中身は梅だった。 昨日も梅だったから好きなのか。 それとも公務員ってそんなに給料もらえないのか。 弁当箱を持ったまま相川は動かない。 行儀悪くおにぎりをはばったまま、相川の手上で蓋を開けた。 「わ、ハンバーグ…」 「そう。 きのこと煮込んだ。」 「鮭も…」 「甘口だよ。 先生、肉と魚どっちが好きか分かんなかったからどっちもいれた。」 蓋を机の上に置くとおにぎりを噛み切り咀嚼する。 「たまご焼きも…美味しそう…」 「それも先生の好み分からないからだし巻きにしました。 市販の白だしだけどね。 下の段も開けてよ。」 言われた通りに開けるとキツネの入ったご飯。 ださい眼鏡の奥で目がぱちくりしてる様に笑いが出る。 「こんなナリしてるから料理出来ないと思ってた? うち両親共働きで帰りも遅いから自炊位出来るよ。 それ、いなり寿司の包まってないやつね。」 食べてよと自分も鞄から同じ弁当を取り出すと相川はマジマジとお弁当を凝視していた。 ははっ、かわい 何時までもそうしている相川に構わずハンバーグを箸で持ち上げると口に運んだ。

ともだちにシェアしよう!