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Long Night without…
「誰の夢、見てたんだ?」
皮肉混じりの恋人の声に、アンソニーははっとして目を開いた。
尋ねておきながら追求するつもりは彼にはないらしい。のんびりと煙草なんて喫っている。
「子供の頃、俺を一番最初に好きだって言った男の夢。今どうしてるか、風の噂に聞きもしないけど。死んだのかな?」
悲しげな溜息を漏らして、アンソニーは呟いた。
無意識に腕が伸びて恋人を抱きしめる。音を立てて長いくちづけを交わした。物理的にでも愛されていると感じられるのは気持ちがいい。
「まだ愛してるのか?」
「さあね。別れようって言ったのは俺の方だけど」
「どうして?」
どうして? 不思議な質問だ。
「大学を卒業したから。つまり結局のところ、その程度にしか愛してなかったからかな」
「でも『その程度』が痛いんだ?」
そう言って恋人は、煙草を持っていない方の手を伸ばしてアンソニーの髪を梳いた。よくわかっている。
「……そう。思い出すたびに、心臓から血が吹き出していくみたいな気分。彼の名前は一生忘れないだろうと思うよ」
もう一度溜息を漏らす。
「俺はなぜ、俺を愛していると言った彼を信用できなかったんだろうな……」
それを考えると、本当に血を吐く思いがする。いつだって寂しかった俺は彼をひとりでいないためだけに利用ばかりしていて。
「……でもだから俺に出会えたんだろ?」
恋人が笑って言った。アンソニーは頷いてその腕に体を沈める。その笑顔がどこか彼に似ているなんていうことを考えるのはもう、やめようと思った。
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