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「っ、おい小鳥遊」
明らかに様子がおかしい。
一体何だ?
ガタッと椅子から立ち上がって、小鳥遊の視界に無理やり入りこむ。
「おい」
ビクッ
「っ、かい、ちょ……」
カタカタ震える体と、さっきより更に蒼白になった顔。
何だ?
この短時間で何が起こった?
(……何かに、怯えてるのか?)
そう言えば、こいつ窓の外見てたな。
何か外にいんのか?
ピカッ
ドドォ……ン………!
ビクッ
「っ!」
雷の音と同時に、小鳥遊の体がビクリと大きく跳ねた。
(ーーまさか)
「お前、〝雷〟が怖いのか?」
「っ、そ、そんなわけないです!」
「いや、そんなわけあるだろ絶対」
(そうか、こいつ雷苦手なのか)
だから外見て震えてんのか。
いつも以上に業務のスピードが早えぇのも、気を紛らわす為だったのか。
成る程、感じていた違和感がどんどん消えていく。
「っ、違いますから……!」
「あー、はいはい」
震える体でキッと睨まれても、何の説得力も無い。
(しっかし、ちょっと怖がりすぎじゃね?)
俺は苦手なもんが無いからわからねぇが、人って普通こんなに怯えるもんなのか?
「おい、大丈夫か?」
「平気ですっ!」
おいおい、いつも以上に噛み付いてくんなぁ。
バレたことが恥ずかしいのだろうか。
でも、別に怖いもんが一つや二つあんのは普通だろ。
(一体、何なんだ?)
「と、とにかくっ、何でも無いですから!」
「次これやります!」とバッと勢いよく机の書類を取られ、パタパタ…と逃げるように自分の席へ戻っていった。
(はぁぁ…何だあれは……認めたくねぇのか何なのか…)
謎だ。
何かそういうプライドでもあんのか?
まぁ、あいつがそう言うんなら、合わせてやるけど……
(ちょっとくらい頼ってくれてもいいのにな……
ーーって)
俺何考えてんだ、今の思考おかしいぞ。
なに寂しいとか思ってんだよ、わけわかんねぇ……
「はぁ…」と軽く息を吐いて、俺も仕事に戻った。
ーーしかし。
「っ!」
小鳥遊は窓の外が光る度にビクリッと体が震えて、何処かへ落ちる音で更に大きく震えている。
あんなに席が離れているのに、それが手に取るように分かるレベルで。
(あれは、どうにも……)
見てるこっちが辛くなる……
やせ我慢にも程があるだろ。
(…ったく、しゃぁねぇなぁ)
カーテン閉めといてやるか、と再び椅子から立ち上がった。
瞬間、
ピカッ!
ドオォォ……ン!!
ここ1番の大きい雷の音と共に
バチッ!!と部屋の電気が消えた。
「ひっ…………!!」
(っ、やべ)
「小鳥遊……!」
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