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【side アキ】
「さて、ハルは……本音で見るとアキと入れ替わりはあったが、単体で見ると今期いっぱい会長秘書として仕事をしている。
だから、このまま副会長へ上がってもらう予定だ。引き続き業務をしてもらう」
「そうだね。僕もそれで了承したよ」
「………じゃあ、俺は?」
さっきから、一向に頭の中の〝?〟が消えない。
イロハが会計でカズマが書記で…ハルが副会長なら、俺はなんでここにいるの?
だって、もう役職は全部埋まったはず。
「ふふふっ。アキ、いっこ席が空いてるよ」
「……秘書、だよな?」
「うん」
「それはハルのために臨時で作った役職だろ?」
元々、生徒会に秘書なんて役職は無い。
今回のは、ハルが体育に参加できないことから追加された臨時のものだった。
(だから、ハルが副会長になったら自動的に秘書の役職は消えるんじゃ……?)
「消させねぇよ」
「ぇ?」
「秘書の役職は消えない。
その為に俺とハルは動いてたんだ」
「さっきも先生たちの話し合いで遅れちゃって……でも、学園長にも許可はしっかり貰ってきたからね!」
この1年、自分や副会長たちがしっかりと職務をまっとうできたのは一重に秘書の役割が大きかった。
これまでこの役職は無かったが、この期にもうひとつ役職を増やしてもいいのではと思う。1人いるだけで負担は軽減されるし、今回見つけたような決算時の不正も今後もっと見つけられるかもしれない。
それに、他の学校には無いその役職は、この学園の新たな特色にもなるのではないかーー
そんな事を言って言って言いまくった結果、学園側が首を縦に振ってくれたのだ。
「そう、なんだ……じゃあ、秘書って役職は今後必須になるんだね」
「うんうんそういうこと。
まぁ、蓋を開けちゃえばレイヤの我儘だったんだけど」
「へ?」
「俺が、お前を隣に置いときたいだけだ」
「隣…に……?」
「あぁ。俺はお前以外をあの席に座らせるつもりはねぇ」
秘書が役職として通った。
後は、どの生徒を秘書とするか……
「他の奴を押す先生方もいたが、俺が全て却下した」
〝あの席は、アキ以外には座らせない〟
これまで培った力で意見して意見して、結果こちら側の勝利となったのだ。
「まぁ、僕も加勢したんだけどね」
「ハ、ハルも……?」
ハルもなら…そりゃ勝てるわけがないんじゃ……
ってか寧ろ龍ヶ崎と小鳥遊だし、その2人が頑として折れないならもう学園側が折れるしかなかったのでは…?
「まぁ、ということだ。丸雛や矢野元には拒否権があったが、お前にははなからそんなもんは無かった。月森も了承している」
「え、先輩も……?」
「クスクス、そうですね」
振り向くと、楽しそうに笑う先輩。
(そっか、だから先輩とタイラはここにいるのか)
「我々親衛隊が許可した理由として、2つあります。
先ずはアキ様と仲の良い丸雛くんと矢野元くんが、この話を拒否するとは考えられなかったということ。そして2つ目にーー」
ふわりと、片方の頬へ手を添えられる。
「アキ様が、それを望まれるだろうと思ったからです」
「っ、」
「いかがですか? アキ様」
「俺…は……」
元々は、ハルとしての俺の場所だった。
でも今は本物のハルの場所になって。しょうがないと思いながらも、放課後レイヤと一緒に残ってるのを見ると少し羨ましいと思ってしまってたりもして……
でもーー
「あぁ、お前の転入に関しても考慮した結果だから、学園歴が浅いのは特に考えなくていい」
「え……」
「それがネックなんだろ? 自分よりもずっと長くここで勉強している生徒がいるのに、俺でいいのかと。
その辺りは俺が先生方に言ってる。正式に発表する時には生徒にも俺から説明するつもりだ」
アキは副会長になるハルの双子の弟だ。なるべくハルの近くにおいていた方が、早くこの学園に慣れるだろう。
しかも生徒会入りとなれば、行事等にも多く触れる機会が多く生まれ必然的に慣れていけるはず。
そして、同じクラスの丸雛や矢野元だっている。
だからもしかしたら生徒会に入れたほうが、小鳥遊の予想外のもう1人の息子を上手くサポートできるのでは……?
そう学園側に思わせた。
そして、なによりもーー
「お前は、俺の婚約者だ。
お前以外に俺の秘書を任せるつもりはないと言った」
「ーーっ、そんな…俺様……」
「あぁ? 上等だ、俺様でもなんでもやってやるよ。それでお前が手に入るならな」
欲しいものを手に入れるのに、手段は選ばない。
それが龍ヶ崎レイヤであり…俺の ーー婚約者だ。
(いいの、かな)
こんなレールの上に乗って…またみんなのいるこの場所に戻っても……
「おいでよ、アキ」
「っ、ハル……」
「僕も、アキと一緒に生徒会したいなぁ」
ハルには…きっと羨ましがる俺の気持ちが分かってたんだと思う。
「おれもやるならアキとがいいっ!色々教えてよアキ!」
「俺もだな。どうせなら楽しくやりたい」
「イロハ…カズマ……」
「ふふ、親衛隊のことは任せてください。ハル様もアキ様も変わらずサポートしてまいります」
「そうですよアキ様っ!大丈夫です!!」
先輩に…タイラまで……
あぁ、もう
「ーーっ、ぅん。入る…入りたい……っ」
俺も、もう一度ここでみんなと笑い合いたい。
たくさんたくさん 楽しみたい。
「ククッ、ようやく言ったか。
なら、お前は前回同様あの席だ。いいな?」
「……っ、はぃ」
クイッと指さされたのは、思い出のたくさん詰まった秘書の席で。
「〜〜っ!」
胸の中に熱いものが一気に溜まって、ガバッと立ち上がる。
そのまま、周りの目もくれずレイヤの胸に飛び込んだーー
(あ!レイヤずるいっ!!
アキ、僕のとこにもおいで〜!)
(ハッ、悪りぃな暫くは俺の膝の上だ)
(ちぇー。じゃあタイラ!ほらおいで〜!)
(ひぇぇっ!?)
fin.
新生徒会、始まり始まり。
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