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1-1:午後0時の戦場 (1)
午後0時、今日も俺は戦場にいた。
「いらっしゃいませ!」
「温めますか?」
「お箸でよろしいですか?」
「ありがとうございました~!」
「お次でお待ちの方、こちらでどうぞー」
オフィス街のど真ん中にある20階建てビルの1階にあるコンビニ。
それが俺の『戦場』だ。
「佐藤くん、これ温めお願い!」
「はい!あ、宮下さん、幕内あがってる!」
「あ、ほんとだ!幕内弁当温めでお待ちのお客様ー!」
文字通り、息を吐く暇がない。
毎日のこととは言え、待ちに待った昼休みが始まったからってなにもみんなまとめて来なくてもいいんじゃないかと思ってしまう。
次々と会計を終えて流れていくスーツ姿の社会人たちは、一様にネックストラップを下げていた。
自分のオフィスに出入りするための鍵でもある社員証をぶらさげているのだけれど、今日は特に、鮮やかなオレンジ色がよく目についた。
「今日は特にネオ株が多くない?」
「でかい会議でもあったんじゃないですか」
俺たち店員が通称『ネオ株』と呼んでいるのは、このビルの11階から20階までを陣取っている大手ゼネコン会社、ネオジャパン株式会社だ。
日本の大きな都市のほとんどに支社があり、その社員数は 、5階から10階までのいろんな会社を全部合わせても、とても比較にならないくらい多い。
特に大きな会議で、あちこちからこの本社に人が集まるとなれば、なおさらだ。
ちなみに、2階から4階は会議室になっていて、時期によって人が集まることはあっても普段はけっこう閑散としていた。
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