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話はかなり前に遡る。
会社の屋上は屋上庭園みたいになってて、そこで昼飯を食べるが日課。
寒くなってきたから、めっきり人はいない。
だけど、別にボッチってわけじゃない。
部長が苦手なんだ。なんか、いつもジロジロ見られるし、よく触られる。昼休みにオフィスにいると昼飯に誘われるから屋上へ避難。
誰もいないと思ったら、そこには同期の篠 がいた。電話してる…………
篠は入社2年目にして営業のエース。
皆が羨む高学歴ハイスペックな男。
真面目で皆が嫌がる仕事も率先してやり、上司を立てるのも上手い。
篠は上司からも同僚からも一目置かれてた。
モテっぷりも半端ない。
高身長でモデル並みの顔とスタイル。
女子社員の憧れの的。
男子社員の間で、付いたあだ名は『恋愛中毒』。浮気も二股もしないのに、彼女と半年以上付き合いが続かない。でも、相手が切れる事はなく、常に会社の誰かと付き合ってる。
『大人しい子が好き。』
篠のタイプは美人とか可愛い子じゃなくて、あまり目立たない子。
付き合うと何に置いても彼女が一番。
優しい。モテるのに一途。
そして、合コンは全く行かなくなる。
彼女をいつでも優先。
一途で寂しがり屋な性格らしい。
なのに、必ず彼女から別れ話をされる。
でも、付き合った彼女達は誰一人、理由を話さない。
噂は色々ある。
実はドSだとか、アブノーマルな性癖を持ってるとか常に噂が飛び交ってる。
まぁ、あくまで噂。
ミステリアスな感じがウケるのか、彼女がいてもいなくても女からは不動の人気。
面倒くさいので、そっと隠れる。
「そっちは変わりない?」
…………電話中か。
『君がいないと寂しい。』
『今すぐ会いたい。』
『大好きだよ。』
驚きのセリフがポンポン聞こえてくる。
彼女と電話中……?
モテる奴はすげーな。
到底、日本人が言えそうにない甘い言葉。
ドラマみたいな歯の浮くセリフ。
だけど、負けない程イケメンだから、あーいう言葉が許される。
モテない奴があれを言ったら、ドン引きされて酷けりゃストーカー扱い。
顔の良い奴はいいな。
何をやっても許されて……
いや。別に羨ましくないけど……
人は人。自分は自分。
なんで、すぐ別れるんだろう……
同期だけど別世界の奴。その日まで俺の中の篠の認識はこんな感じだった。
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