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第7話

 時計を見ると、少し昼を過ぎた頃だった。  少し体がだるかったので、二人でベッドでごろごろとしていたが、少しだけおなかが空いてきたような気がする。 「南波ー……昼、どうする? 冷蔵庫の余り物でご飯つくるか……外、行くか……」 「ん……」  南波はぼんやりと俺を見つめて、「どうしようね」と囁く。俺の耳たぶを指でいじりながら、くすくすと笑っている。 「そういえば、この前職場の人に教えてもらったんだけど、駅前に新しいお店ができたんだって」 「じゃあ、そこ行く?」 「うん……でも、もうちょっと休んでいいかな。少し、だるくて……」 「あ、……ごめん。俺がちょっとやりすぎちゃった……」 「ううん……大丈夫だよ」  南波の腰を撫でてやると、「きもちいい~」と腑抜けたような声を出されたので、そのままゆっくり撫で続けてやる。 「可愛いな、南波は」 「……恥ずかしいから、あんまり言わないで」 「言いたいから言ってるだけ。聞き流していいよ」 「聞き流すなんてもったいないよ」 「どっちだよ」  南波の額に、キスをする。  そういえば、珈琲豆がきれていたから、ご飯を食べに行ったついでに買ってこよう。ブルーマウンテンもいいけれど、南波と一緒に他の豆を選ぶのもいいかもしれない。 「ねえ、伊勢くん。さっき、珈琲豆きれていたよね。ついでに買いに行こうよ」 「……同じこと考えてる」 「? ふふ、伊勢くんの珈琲が大好きだから、珈琲豆がきれるのは僕にとって死活問題なんだ。さっき珈琲豆きれたの見た時、やばいなって焦っちゃった。ドイツ人の血はビールでできてるっていうけど、僕の血は伊勢くんが淹れる珈琲でできていて、」 「……そうかい。愛してるよ、南波」 「えっ! ……あ、……うん。と、突然言われるとドキドキするね」  くすくすと笑う南波の声が、耳をくすぐる。  もう、自分の人生を鉛のようだなんて言わない。どうせなら、珈琲豆って言ったほうがいくらか可愛らしい。 了

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