94 / 129
第94話
「君が選ばれるまでに、必要条件をクリアするための個人情報を集めたから…殆どのことは知っているんだ。今はお父さんが入院していて一人で暮らしているんだってね…」
「…!」
「慣れない場所で…独り暮らし…大変だったね、弱音もはかずよく頑張っている」
ベッドサイドへ腰掛けて、そっと由里の頭を撫でるコウヤ。
「…っ」
その言葉が胸にじんわりと入り込んでくる。
「学校でつらい目にあっても我慢したんだよね…お父さんに心配かけないようにね、偉いよ」
そっと肩に触れて慰める。
心の内側を見透かすような言葉…
そんなふうに優しくしてもらった事がなくて…
今まで我慢してきた思いがあふれてきて…
「っ…ふ、ぅッ…」
熱い涙がこぼれおちる。
ともだちにシェアしよう!