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第16話

「蒼、カラオケ行こうぜ」 礼央が俺の肩に腕を回してきた。 またか。 俺はムッとして礼央の腕から逃れる。 「いや、いいや」 「なんでだよぉ、お前歌上手いんだからさぁ」 「そう言って歌わせてくるからやなの!」 礼央はいつもそうだ。 なんで歌いたい訳では無い曲を 適当に集められたギャラリーの前で 歌わなきゃならないの。 俺は鞄を持ってそそくさと教室を出る。 これ以上何を言われても行く気は無い。 礼央は構わずについてくる。 「減るもんじゃないんだし、歌ってよ〜」 「どっちにしろ今日は用事あるからむーり」 「はぁ?!」 礼央は目を見開いた。 「お前来るってみんなに言っちゃったよぉ」 「なんで勝手に言うの?」 俺がカラオケ苦手って知ってるだろ。 今まで誘われて行ったことなんて 数える程しかなかっただろ。 なんで来てくれると思ったんだ。 「だぁって、蒼くん連れてきてって 女子たちが言うんだもん〜」 ほら、やっぱり。 礼央はすぐ俺を使って女子の機嫌を取ろうとする。 俺は礼央が女の子にどう思われようと興味無いし 女の子の前で歌うのとか、余計にやだし。 「冬弥連れてけばいいだろ」 冬弥はかっこいいから その場にいるだけでみんな喜ぶはずだろう。 それに、あいつはちやほやされるのが好きだ。 多分。根拠はないけど。 「冬弥もお前がいなきゃ来ねぇよ〜」 礼央は俺に縋りついた。 んーー、めんどくさいなぁ。 本当に約束があるから早く帰りたいんだけどなぁ。 「じゃあ、次は行くから。ね、それで勘弁して」 俺の言葉に礼央はぱっと笑顔になる。 「約束だかんな!!!絶対だぞ!!!!」 「あーはいはい。じゃあね、ばいばい」 俺は逃げるように足早に学校をあとにした。

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