176 / 2160

ー記憶ー120

 二人が恋人同士だと知っている和也はその二人の行動にクスクスとしていた。  それから待合室で午前の外来が終わるまで待たされた雄介。  その間にも待合室にいる患者さん達は減っていく。  とその時、 「桜井さんどうぞー」  そう和也がどうやらふざけて雄介の事を呼んでいるらしい。  そして雄介は和也に呼ばれると診察室の方へと向かう。 「おい……コラッ! 和也……! 恥ずかしいやろうがっ!」 「ま、いいから……いいから……ほら、完全に戻った望に会いたいんだろ?」 「あ、ああ……まぁ……」 「望も早く雄介に会いたいからって午前中の診察早く終わらせたんだしさ」 「……へ?」  和也は早く雄介に診察室に入るように促す。  雄介は先程までは確かに望に会えるっていうだけで興奮気味だったのだが、今はその熱が完全に冷めてしまっているせいか今まで自分がとっていた行動も恥ずかしくて仕方がないようだ。  今は逆に冷めてしまっている状態ではなかなか望の元に向かえないでいる。  とりあえず和也に背中を押されて診察室のドアを開ける。  そこにいたのは多分いつもの望だろう。 そう雄介はまだ完全に望の記憶が戻ったという事を知らないのだから、まだまだ疑心暗鬼状態でもある状態だ。  しかし雄介の目の前にいる望は、雄介が研修に行く前とは違い仕事をこなしているようで、そこに気持ち安心する雄介。 そう雄介が研修に出掛ける前までは望は仕事はしていなかった筈だ。 だけど今は診察室の椅子に座ってちゃんと仕事までしていた。  だがこう冷めてしまった今では望に話をどう切り出していいのかっていうのを悩んでしまっているのかもしれない。 目の前に望がいるのに直視出来ていないのだから。  雄介とは裏腹に和也の方は雄介の背中を押していて、そのまま診察室にある椅子の方へと座らせる。  やはり急に冷静になってからでは、あまりにも久しぶり過ぎて言葉に出来ないのはなんでなんだろうか。  一方、望の方は相変わらずといった方がいいのであろうか。 雄介が来ているのにも関わらずパソコンの画面を見ている。 どうやら望の方も雄介に会う事が久しぶり過ぎて直視出来ないようだ。  このままでは何も先には進まない。 「……ったく、お前等なぁ」  そう和也はその二人の態度に呆れたようなため息を吐き、 「雄介……腕出して……」

ともだちにシェアしよう!