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ー天災ー51

 久しぶりの恋人との再会に本当は嬉しい筈なのに体の方はもう反対な行動をしてしまっているような気がする。 いや違う。 勝手に何処かに行ってしまった雄介の事を許してないからだ。  これがもし雄介が望に異動の事をちゃんと伝えていて何処かに行ってしまっていたのなら、この再会というのは嬉しいと思う。 だが今回の事はそういう事ではない。  雄介は望に置き手紙だけを残して行ってしまったのだから、それが望からしてみたら許されない事だった。  そして望はひと息吐くと、 「とりあえず、分かった……だから、話は後で聞いてやる。 今はすべき事はする所だろ! だから、この手は離せっ!」  望は少しは冷静になってきたのか、そう静かに言うとみんなが動いている方へと視線を向ける。  それと同時に雄介も物質を運んでいる人達の方へと視線を向けるのだ。 「せやったな。 スマンかった……。 今はこないな事しとる場合やなかったんやっけなぁ」  雄介は望にそう冷静に言われて自分がなんの為にここに来たのかを今思い出したようだ。  雄介だってまさか望がここにいるとは思わなかったのであろう。 だから一人平静さを保つ事が出来なかったのかもしれない。  そして望にそう言われてやっとの事で雄介は望の手首を離すのだ。 「ほら、手伝うぞ!」 「ああ」  そして二人も物質を運ぶのを手伝い始める。  雄介は今の今まで望の事がいっぱいで周りの景色には気付いていなかった様子だ。 物資運びを手伝う最中に見えて来た景色というのは荒れ果てた春坂の街並み。  本当に春坂は今大きな地震が起きてしまい大変な事になっている。 事故や爆発の次元ではない。 そうだ人間が起こす事故との次元とは全く違う。 自然が起こす災害の方が怖いとさえ思う。 動物界で一番の頭脳を持つ人間でさえも自然には敵わないという所だろう。  今まで煌びやかに輝いていた街並み。  だが今はその景色はない。  そして人々の笑い声さえも聞こえて来ない世界になってしまっていた。

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