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ー天災ー59
和也が本格的に寝てしまった後、部屋の中は本当に静かな空間へと変わってしまう。
今は何も無い世界。 音も光りも、あまり聴こえて来ない世界になってしまった。
だから会話が止むと本当に時計の針の音しか聞こえて来ない世界でもある。
そして未だに望だって雄介の事を本格的に許した訳ではないのだから和也が寝た後は二人の間には会話はなかった。
だが雄介は望に怒られるのを覚悟で望の背後へと近付く。 そして背後から望の事を抱き締め改めて一言。
「ホンマ、スマン……。 それと無事で良かったわぁ」
望は雄介に抱かれている腕を振り解く事なく机に向かって仕事は続けていた。
しばらくの間、雄介の独り言しかなかったのだが、雄介の方だって望に無視されるのは予想の範疇だったのだろう。
ただただ抱き締めて、望に腕解かれないだけでもいいのかもしれない。
「……し、仕方ねぇだろ」
「……へ?」
やっと口を開いてくれた望だったのだが、やはりまだハッキリとは言えなかったのか小さな声過ぎて雄介の耳には届いていなかったらしい。
「仕方ねぇって言ってんだ……。 俺達の仕事は人を救うって仕事をしてんだからさ。 お前は優秀な消防士だったんだろ? だから、レスキュー隊の訓練を受けられたって事なんだろうしさ。 だから、他の所でお前の事が欲しかったんだろうぜ。 だから、仕方ねぇって言ってんだよ。 俺等の事は仕事の次だろ?」
「ああ……まぁ、そやなぁ」
「じゃ、それでいいじゃねぇか……。 それに、神様は試練を与えてるかもしれねぇけど、こうして、また、俺達に会える機会をくれたんだろ? なら、それでいいんじゃねぇのか?」
そう言うと望は雄介の事を見上げて笑顔を向ける。
雄介もその望の笑顔に答えるかのように望に笑顔を向けると、やっと二人の視線が重ね合う事が出来たようだ。
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