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ー天災ー70
もしかしたら望は寝たフリをしているのかもしれないのだが、それをも気付かないフリをして雄介は望の頭を撫でる。
今はとりあえず恋人といれるだけでも幸せなのかもしれない。
雄介が違う土地に行ってしかってから数週間いや数日位なのかもしれないのだが、雄介は望と離れていた。 しかも何も望には告げずに違う土地へと行ってしまったのだから雄介の心は穏やかではなかった筈だ。 そして後悔。 何であの食事会の時に自分は望に素直に伝えられなかったのであろう。 望に言われた通りに望に異動の事を告げていたのなら、こんなにも後悔をせずに済んだのに……。 だがどうしても雄介の口からはその事については出て来なかった。 そうだ一緒に住み始めて直ぐの事だったから相手の事を悲しませたくないと思った事がいけなかったのであろう。 望も言っていた。 逆に言ってくれた方が心も準備が出来ていたかもしてないと。 今回の事については雄介の考え過ぎだったのかもしれない。 よくよく考えてみれば望の言う通りだ。 確かに望にちゃんと異動の事を告げて違う土地に行っていたなら後悔なんかしなかったし、さっき望が言っていたのだけど自分の方にも心の準備というものが出来ていたのかもしれない。
「俺……馬鹿みたいやん」
そう呟くと雄介は目を瞑る。
そして次の朝、一番最初に目を覚ましたのは雄介だ。
いつもなら鳥とかの鳴き声や車が走る音が聴こえてくる筈なのに、今は全くもってその音は聞こえて来ない。 多分動物達は第六感というものが働いていて今は違う土地で暮らしているのであろう。
「変に静かになってしまったんやなぁ」
そう雄介はため息混じりに欠伸をする。
本当に音も何も聞こえない世界。
初めてここに来た夜は光りを全く感じられなくて、今日は今日で音さえも感じられない世界だ。
雄介はベッドの中でモゾモゾとしていると望の方も目を覚ましたようで、
「ん? 何してんだ?」
「へ? 何もしてへんやんか……寒いからくっついてようって思うただけやし」
「どこか寒いんだよ。 寧ろ、今は暑い位だろうーが……」
「まぁ、そういう事になるんかな? とりあえず、何もしてへんから安心して。 ただ起きてボッーとしとっただけやから。 なんやろ? こう朝が静かになってもうたなぁって思ってな。 ほんで、まだ時間あるか? ってか……もうちょい今日はゆっくり寝てようって思うておったら望が起きてきたって訳だし」
そう雄介は説明すると仰向けになる。
「そうなのかよ……」
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