308 / 2160
ー天災ー129
そして望はふぅーと軽く息を吐き、
「そだな……」
と呟くように口にする。
その言葉に雄介は望に向かい微笑むと雄介は望の手を取り再び階段を上がって行くのだ。
病院の屋上にはヘリポートがある。 ついこの間、雄介はここに降り立った場所だ。
そして望が雄介の事を初めて叩いた場所でもある。
確かに今ここでしか二人きりになれる時間というのはないのかもしれない。
屋上へと出ると今は梅雨の時期だというのに月明かりがあった。
梅雨の時期の貴重な晴れ間だという事だろう。
しかし屋上は月明かりっていうだけで後は何も光りがない。
地震が起きる前までは十分過ぎる程にビルの灯りとかあったのに今はそれもない。
とりあえずライフラインは復旧し始めているのだが、あの地震で建物という建物が今は無くなってしまっているのだから本当に夜というのは闇が広がる世界でしかない。
唯一頼れるのは本当に月明かりだけだ。
そして望は雄介に連れて来られて屋上にある柵へと寄り掛からせる。
「……で、話っていうのは?」
と望は腕を組みながら雄介の事を見上げる。
「話っていうのはな……ま、さっき望が言ってた通りで……」
と何故だかそう視線を反らしながら言う雄介。
「……?」
望が見上げた先に入って来た雄介の横顔。 暗闇でよくは見えていないのだが気持ち赤くなっているようにも思えるものは気のせいであろうか?
「とりあえず、もうすぐ、帰る事になったし……」
「だから、それだけなんだろ?」
本当にそれだけの理由でここに連れて来られたというのなら若干イライラする。
「だったら……もういいじゃん! 戻ろうぜ……」
と望は本当に戻ろうとしていたのか歩みをドアの方へと向けていた。
「それに、俺はもう、そこは仕方ねぇって思ってるからさ……」
とその時ガシャンっていう鉄音がこの暗闇の中鳴り響く。 それと同時に手首に痛みが走ったのか望は痛みで顔を歪めていた。
次の瞬間には、こう雄介の切ない表情というのか真剣な表情というのか、そんな表情が望の視線に飛び込んで来てたようだ。
「……望は……こう……寂しいとかって思わないん? 俺、向こうに帰ってまうんやで……」
再び手首に痛みを感じる望。
「ちょ、痛いって……っ!」
きっと今の言葉で雄介の手に力をが篭ったのであろう。 更に雄介に押さえつけられている手が痛くなってきてるようだ。
ともだちにシェアしよう!

