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ー波乱ー51

 今まで怒りの頂点に達していたその女性だったのだが和也の言葉に仕方なさそうに息を吐く。  そんな女性に和也は再び、 「本当に申し訳ございませんでした……」  最後にもう一度頭を下げた和也。 だが、その直後、和也の視界に裕実の姿が目に入ったようだ。  この沢山のギャラリーの中にいた和也の恋人である裕実。  裕実は和也と視線が合った瞬間その場から立ち去るように走り出してしまっていた。  そんな姿に和也は頭を掻きながら顔を俯ける。 そこで、きっと和也は何か裕実の行動に思ったのかもしれない。 もし自分がこんな状況を見てしまったら!? 嫉妬するに決まっている。  そんな裕実に軽く息を吐くと和也はその女性に向かって、 「では……また、機会がありましたら……」 「そうですね……」  そう和也はその女性との話を終えると笑顔向ける。 その直後だっただろうか。 僅かにだが和也の耳には裕実の悲鳴みたいなのが聞こえたような気がした。 だからなのか和也は急に目の色を変えギャラリーの輪の中から急いで抜け出す。 「なんやねん……アイツ……ここまであないに紳士的な態度とっておったのに、急に走り出したみたいやで……」 「ああ、まぁ……まぁ、そうなんだけどさ。 でも、和也的にはあの女性とはもう完全に振ったという事なんだから、もう、気にしてねぇんじゃねぇのか?」 「……にしたって、仕事まで時間はあんねんやろ? そしたら、あないに急いで行く必要あんのか?」  雄介にそう言われて望は愛用の腕時計を見るのだが確かに雄介の言う通り、まだまだ時間がある時間でもある。  裕実の所に行くにしても、この階ではなく屋上に行っているのであろう。  病院内で人気の無い場所と言えば屋上しかない。 あの二人の休みが被れば屋上に行くのは望も知っている事なのだが。  その頃、和也は裕実の声がした方へと向かっていた。  この病棟は広く先程のエレベーター前から数十メートル先程まで病室がある。  先程、和也いたエレベーター前は騒がしかったのだが、あそこから離れてしまうとこっちの病室の方は静かだ。

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