1066 / 2160

ー海上ー89

 確かに日本の医療発展の為に勉強しに行くのは構わないのだが、やはり雄介と離れるのは憂鬱な所だ。  そう望がボッーと考え事をしている間に車はどうやら港近くにある駐車場へと着く。  そして望はトランクからさっさと荷物を下ろすと、裕二にはまったくもって挨拶もせずに一人船がある方へと向かってしまうのだ。  一方、和也の方は自分の荷物を下ろすと裕二に向かい軽く頭だけを下げて望の後を追い掛ける。  和也は望へと追いつくと、 「お前……いいのか? 親父さんに挨拶しなくてさ」 「別に……いいんだよ。 だって、親父だって俺の性格知ってるんだろうしな」  そういう風に言う望なのだが望の言葉に変に納得すると裕二もいなくなった訳でいつもの和也へと戻り、 「なぁ、お前さぁ、車の中で暗い顔してたみたいだけど……何考えてたんだ?」  和也の方はそう言うと望の事を覗き込むように言う。 「ん? あ、ああ……まぁ、ただ単に今回の勉強旅行は嫌だっただけさ、今の俺には一週間は長すぎるからな」 「望が一週間を長く感じる!? って、まさか雄介に会えないからじゃねぇよな?」 「……そのまさかに決まってるだろうが」  一応、間は置いたものの望にしては和也からの問いに素直に答えたようにも思える。  その望の答えに対してか和也は一瞬は目を丸くしたのだが顔を空の方へと向けて、 「やっぱり、望は雄介のおかげで変わったんだよな。 うん! 望の恋人が俺じゃなくて良かったって思うよ。 俺じゃあ望の事変える事なんて出来なかったと思うしさ」  和也はその言葉を言った後に望がいるであろう方向に視線を向けたのだが、望の方はどうやら先に行ってしまったらしく和也が気付いた時には望の姿が前の方にあった。 「……って、人がせっかく真面目に言ってるのに、全く先に行きやがって……」  そう独り言を漏らすと先に行ってしまっている望の事を追い掛ける。  それから二人は船の方へと乗り込むとチケットに書いてある通りの部屋へと向かうのだ。 「なぁ、この船で行くのか? ってか、中はホテルみたいだよなぁ? これが俗に言われてる豪華客船っていうやつなのか?」  和也は船の中に入ると周りを眺めながら望の後に着いて部屋へと向かう。 「親父が手配してくれたんだからいいんだろ? それに、半分無理矢理強制的に行かせられてるんだからさ……これくらいの船でいいんじゃねぇのか? そうじゃねぇと割に合わないような気がするしな」 「ま、確かにそうだよなぁ」

ともだちにシェアしよう!