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ー海上ー112

「お前なんて客であって客じゃねぇんだよ」 「まぁ、そうなんだけどよ。 俺の方も今日の事故で疲れてんだし、簡単な物でいいか?」 「そこは構わねぇよ」  二人は友達らしい会話をしながら和也は望の家も駐車場へと車を止めると望の方は先に車から降りて家の方へと向かうのだ。  望は家の鍵を開けると部屋へと足を運ぶと部屋内はシンと静まり返っている。 そして誰も居る気配というのはない。  そんな事分かっていたのだが、やはり雄介がいない生活というのは慣れないようだ。  そこに望はため息を吐くと部屋の中へと入って行く。  そしてスーツを着崩しソファへと座る望。  今日、用意して行った荷物は今はない。 「流石に荷物の保証はしてくれねぇよな?」  望の後ろに着いて部屋に入ってきていた和也にそう声を掛ける望。 「何か大事な物でも入っていたのか?」 「んー、別に……」  望はそう適当に答えたのだが和也の方はその望の何気ない返事に、 「なぁ、その答え方だと何か意味ありそうなんだけどな」  和也はその望の言葉を弄る為だろう。 望が座っているソファの背もたれへと寄り掛かる。 「とりあえず、応急セットは無駄になった」 「それと?」  とそう和也が突っ込むと望の方は急に顔を赤くしている。 「あー、もう! どうでもいいだろー! お前はもう飯作れよなぁ!」 「へぇー、そういう事かぁ……望はやっぱり雄介の事が好きなんだよな」 「どうして、お前は分かるんだよー」 「望の顔に書いてあるしー、引っ掛けてみた」  そう言いながら和也はキッチンへと向かう。 これ以上突っ込むと望に怒られそうだったからだ。  その姿にため息を吐く望。  和也の言う通り望は今日持っていっていた荷物の中に雄介から貰った写真を一枚入れていた。  それはレスキュー隊になったばかりの写真で多分雄介の仲間にその写真を撮ってもらったのであろう。  そこに写る雄介はオレンジ色の服を着て生き生きとしている笑顔の写真だ。  望もその写真は好きだ。  プロのカメラマンが撮った写真とは違う自然の笑顔。  しかも今日の朝雄介に渡された写真で望はいつものように「いらない」と言ってしまっていたのだが雄介は半分無理矢理荷物のポケットに入れて来た物だ。  内心では望も好きだった写真だったのだから呆れながらも微笑んでいた覚えもある。

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