1215 / 2160
ー崩落ー85
「ばっかじゃない! 僕が直ぐに負けを認める訳がないじゃないか! もしかして、梅沢さんは兄さんに答えを教えてもらって勝った気でいるの? まさか、そういう訳じゃないよね?」
本当に歩夢という人物は望よりも全くもって可愛くないと思う和也。 もし、この場に裕二や望がいなかったら歩夢の事を殴っていたのかもしれない。
その証拠に顔は怒りで奥歯を噛み締め拳を握っているのだから。
そんな時、和也の隣に座っている望が和也の服の裾を引っ張る。
「もう、逆に歩夢に構うんじゃねぇよ。 何言っても何かしら文句とか言ってくるんだしよ……寧ろ、こっちが疲れるだけなんじゃねぇのか?」
「でもよー」
「じゃねぇよー。 自分でも下らないって思わないのか? ガキ相手に本気になるなんてさ」
「まぁ、確かにそうなんだけどよ。 こんなんじゃ、俺が望や裕実の事守って上げる事が出来ないだろ?」
「別に俺はお前に歩夢から守ってくれなんて言ってねぇじゃんかよ。 お前が勝手にそう思ってるだけだろ? 俺の事を守ってくれるより、裕実の方をお前が守ってやればいいんじゃねぇのか? ってか、俺とこんな事話している時に裕実の方は大丈夫なのか?」
そう望に言われて和也は後ろの席にいる裕実の方に視線を向けるのだが、いつの間にか和也の後ろに裕実の姿がなかった。 目を見開きながら辺りを見渡すと窓側に裕実の姿がある。
和也がそんな裕実の姿に目をパチクリとさせていると、裕実が、
「新城先生が席変えてくれたんですよ。 『ガキの修学旅行じゃないんだから……うるさいのはゴメンだ』って言ってね」
「そういう事だったのか……」
「……って、新城先生は言ってますけど、きっと、新城先生の事ですから僕達の事を歩夢君から守って下さったんだと思いますけどね」
そう裕実は和也に笑顔を向ける。
「仕方ねぇな……今回の事はそういう事にしといてやるよ」
和也は急に安心したのか正面を向いて深く腰に下ろす。
そして徐に今日持って来たリュックを棚から下ろし、
「やっぱり、旅行って言ったら、おやつだろー!」
そう急に明るく元気に言う和也。 そして、その持って来たおやつを嬉しそうに食べ始める姿に望は大きなため息を漏らすのだ。
しかし本当に和也という人間は子供っぽい性格なのかもしれない。
「お前なぁ……ガキか?」
ともだちにシェアしよう!

