1277 / 2160

ー過去ー9

「スイマセン……ありがとうございます」  その人物は実琴が手を差し伸べるとその手を取り立ち上がる。  その人物が立つと二人は視線が合ってしまったのか暫くの間見つめ合っていたのだが、 「名前の方、知らなくて申し訳ないのですが、君はここに用事があったのでしょうか?」 「スイマセン……。 とりあえず、ありがとうございます」  とりあえずその人物は実琴に向かい頭を下げると、 「あ、まぁ……とりあえず用事があるというのか……まぁ、そのようなもんですよ。 もしかして、この部屋から出てきたっていう事は新しい方ですよね? 僕の方もここで働いている本宮裕実です」 「あ、スイマセン……。 いきなり過ぎて自己紹介するの忘れてましたが……」  そこで実琴は一瞬視線を上へと向け、 「本宮さんでいいんですよね? 偶然なんですが、僕の方も本宮っていうんですよ。 本宮実琴です。 宜しくお願いしますね」 「え? 本宮!? え? えー? 本当にですか!?」 「そうですよー。 名前、偽ってどうするんですか?」 「ですよねー。 同じ苗字同士、これからよろしくお願いしますね」 「……ですね」  二人は笑顔で挨拶を済ませると実琴の方は部屋を出て行き、裕実の方は今度部屋の中へと入って行く。 「和也ー、今日は遅いじゃないですかー。 和也がいつまでも来ないので僕がここまで来たんですよ」  そう裕実は少し怒りながら和也の事を見上げたのだが、どうやら聞こえてないようだ。 挙句、望と和也には近づくなオーラまでも出ているのだから、裕実の方は仕方なくソファに座って大人しく待っている事にしたらしい。 「だからさぁ、望の方は本当に俺の事わかってねーって言ってんの!」 「あー! 分かってねぇよ! ってか、分かる訳ねぇだろ! お前なんか特に自分の事を言わないんだから分かる訳がねーだろうが!」  その望の言葉に和也の方は胸がドキリとしてしまったようだ。 急に動揺し今までの勢いまで無くしてしまっているのだから。 「とりあえず、前にも言った筈だ。 お前は一見、言いたい事は言ってるんだけどさ、自分の事は棚上げっていうのかな? つーか、お前も俺と一緒で心の中に色々と溜め過ぎなんだからな! そんでもって、何でもかんでも一人で解決しようとしてるしな! だから、俺がお前の事分からなくても不思議じゃあねぇだろうが……。 俺はお前のように人の心の中をこじ開ける事なんか出来ねぇんだからな。 友達だって思っているからこそ、無理矢理こじ開けないって言った方がいいか? それに俺はお前のように器用じゃねぇ、口に出した言葉をそのままの意味で捉える事しか出来ねぇんだよ。 だから、さっき人が真剣に言ってる事をお前が茶化したからムカついただけだからな」

ともだちにシェアしよう!