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ー過去ー132

「あ、なるほどな……せやから、望は夜の仕事が少ないって訳なんやなぁ」 「そういう事。 確かに他のスタッフさん達には悪いとは思ってるんだけどさ。 親父がそうしてくれちゃってるからそれはそれでいいのかなぁ? って最近はそう思うようにしてるよ。 本当はもっとこの仕事っていうのは過激な仕事なんだけどさ……。 他の所では三十六時間勤務とかって当たり前みたいだしよ」 「望の親ってどんだけお前に甘いねんなぁ?」 「そこは仕方ねぇんじゃねぇ? 俺が小さい頃っていうのは日本にいなかったんだからさ……。 だから、今甘えさせてくれてるんじゃねぇのかな?」  その望の言葉に雄介の方は目を丸くするのだ。 そう望にしては珍しく素直な言葉を言っていたからなのかもしれない。 「な……最近の望はどないしたん?」 「何がだよ……」  そんな意味ありげな雄介の言葉に望の方は目を座らせて雄介の事を見上げる。 「目を座らせたって事は、意味分かってんのに聞いてきてるやろ?」 「分かったか……まぁな……」 「ホンマにどないしたん?」 「大した事じゃねぇよ。 雄介に言われている事を日頃から練習するようにしてるって事だな」  そう笑顔で言う望に雄介は再び目を丸くするのだ。 だが雄介は直ぐに目を丸くすると、 「やっぱ、俺、望の事が好きやぁ!」  そう言いながら雄介は泡でいっぱいになっている体で望の事を抱き締める。  そんな雄介の行動に望は拒むことをせず、その時を幸せいっぱいの表情で過ごすのだ。  昔は『幸せ』って言葉を知っているようで知らなかった望。 小さい頃の望というのは親と離れて暮らしていて、そう幸せそうな家族を見ると子供ながらに『寂しい』と気持ちを抱いていて『幸せ』っていうのを感じた事がなかったのかもしれない。 大人になってからも、いつもと変わらない日常が続き仕事で忙しくて『幸せ』を感じる暇さえもなかったのだが、今、雄介のおかげで本当に望は幸せというのを感じているのであろう。 そうだ今では友人にも恵まれ恋人にも恵まれ家族にも恵まれて来たのだから、これを『幸せ』とは言わずなんて言うのだろうか。  今まで『幸せ』に恵まれていなかった望なのだから、今になって幸せっていう言葉は望の体を包んでくれているのかもしれない。 「あ、ああ……俺も……雄介の事が好きだぜ」  まだまだ小さな声ではあったのだが、望なりに雄介へと自分の気持ちを伝えたようだ。 やはり、お風呂場っていう所だけあってか、シャワーや、そのお湯がタイルを叩きつける音でどうやら今の望の言葉は雄介には届いてなかったのかもしれない。

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