1543 / 2160
ー天使ー90
「お前は俺達の貴重な時間をダメにしちまうのかよ」
その望の言葉に一同は目を丸くし、一瞬で救急車内は静かな空間になってしまったような気がする。
まさか望がみんなの前でそんなことを言うと思っていなかったからなのかもしれない。
「おい……望! 本当に大丈夫か?」
「大丈夫に決まってんだろ?」
「頭打っておかしくなっちまったのかなぁ? って思ってよ」
「至って正常だろうがぁ、記憶喪失になった訳でもないんだからよ。 今回に限っては裕実も和也も雄介も分かってるんだからさ」
「ああ、まぁ、そうだよな?」
とりあえず不思議に思いながらも救急車は勝手に春坂病院へと向かうのだ。
救急車が春坂病院に着くと、望は自力で立ち上がり誰の手も使わず一人で病院内へと入って行く。
そんな望の後ろを四人は着いて行くのだ。
きっと和也か裕実かの提案で先に望を行かせたのかもしれない。
まだ今の時間というのは患者さんが待合室で待っている時間だ。
そんな中、望は何処に向かっているのであろうか。 ロビーも抜け診察室も通り過ぎているのだから。
「望、何処に行くつもりなんだ? 診察室は過ぎちまったけど……」
「親父んとこ……。 親父はさぁ、あんまり診察とかやらねぇけど全部の科の事分かってるからな。 だから、診てもらうんなら一番手っ取り早いと思ったんだよ」
「そういうことか……」
そう一人納得した和也だったのだが、眉間に皺を寄せ和也の隣りを歩いている裕実と雄介のことを交互に見つめる。
「和也が言いたいこと……分かりますよ。 望さんにしては、今日の望さんはやけに素直なんですよね?」
「ああ、そういうことだ。 確かに、最近は素直になってきたとこはあったけどさ、それ以上に素直なんだよな……今の望っていうのはさ。 やっぱ、頭打ったことで素直になっちまったのかなぁ?」
「それしか考えられませんもんね」
「そういうことだ」
望は裕二のとこに行くと言っていたが、このまま和也達が望の後を着いて行っていいものなのであろうか。
「つーか、俺達どうする? 院長室って、簡単に入っていい場所か?」
「ですよね? 僕達は院長室の外で待ってましょうか?」
「だな」
ともだちにシェアしよう!

