1860 / 2160

ー希望ー5

 和也はそんな望に気付いたのか、雄介の耳傍で小さな声で話す。 「今日の望、いやに怖くねぇか?」 「確かにそうやねんなぁ。 俺もあんな望今まで見た事ないしな」 「そうだよなー。 俺もあんなに怖い望を見たのは初めてなんだよなぁ」 「どないしたんやろ?」 「さぁ? そこは俺でも分からねぇよ」  そんな二人の横から望はまた、 「お前等さぁ、話してる暇なんてないんだぞ……。 桜井先生は特にだ……」  そう望は目を座らせながら雄介の事を見上げる。  そんな望に雄介は一息吐くと、 「はいはい分かりましたよ」  と言う雄介に望は頭を抱えながら大きな溜め息を吐き、 「お前なぁ、ここをどこだと思ってんだ? つーか、お前はまだ自覚がねぇんだろ? 医者になったっていうさ……。 だから、俺はお前に医者になる資格は無いって、あれほど言ってたのによ!」 「せやかて、医師免許取ることが出来たんやんか」 「そういう意味で言ってるんじゃねぇよ」  望はもう一度、溜め息を吐くと、 「医師免許は取れたかもしれねぇけど、お前の場合、ふざけているとしか思えねぇんだよ。 まず、不純な動機で医者になるって決めたのもマズいんだけどさぁ。 お前から真面目さが感じれなかったら、親父に言って、仕事辞めてもらうし、診療所の話はなかったことにしてもらうか、新城にしてもらうことにするよ」 「あんなぁ、そう言うけどな……俺やって、まだ、初日やし、色々と必死なんやからな。 それに真面目、不真面目なところは、まだ、分からんところやろ?」 「まず、その言い方だと真面目にやっていないということが言い切れる。 何で、自信を持って、『俺は真面目に仕事をしてる』と言い切れない? それは真面目に仕事をしてないからだろ?」 「そういう訳じゃなんやけどなぁ……」  雄介は何故か望から視線を反らすと、 「……ただな。 初日やって事を言っておるだけなんやけど……」 「それはさっき聞いた。 だから、そういうことを俺は言ってんじゃねぇんだって言ってんだよ。 じゃあ、何か仕事に関して真面目にやってたことはあるか?」  そんな二人のやりとりに和也は目を丸くしながら見ていた。 寧ろ見ているしか出来なかったという方が正しいのかもしれない。

ともだちにシェアしよう!