1969 / 2160
ー信頼ー21
そんな素直な望に雄介の方はまともに望の事を見ていられなくなったのか、瞳を宙に浮かせ眉間にまで皺を寄せてしまっている。
そこで雄介はある事をフッと思い出してしまったようだ。
「な、望……風邪とか熱とかって出してへんか?」
その雄介からの質問に目をパチクリとさせる望。 そして、その雄介の言葉で何か思い出したのか急に頰を膨らませ、
「……何だよ……疑ってるって事か?」
望がそうポツリと漏らした言葉に、再び雄介は瞳を宙へと浮かせ、
「あー、スマン……そういう訳じゃないんやけどな。 ほら、望って、熱とか出すと体が熱くなるからなのか……あーっと……まぁ、そこは素直になるやんか……」
そう雄介の方は言いにくそうになのだが、そこはちゃんと答えたようだ。
「それは、前に俺が記憶喪失になってからの後遺症の事だろ? 大丈夫、今はちゃんと意識の方もあるしさ。 だから後遺症でも何でもねぇよ。 至って、普通の俺なんだからな」
そんな事を本人の口から言われても、やはり素直ではない望の方が普通の望なのだから違和感は感じてしまう。
「あー、まぁ、ほなら、ええねんけどな」
「……お前さぁ、忘れたのか? 俺等って前に約束のような事したじゃねぇか。 俺の方は素直になるっていうのとお前の方は決断力を付けるって事をさ、だから、俺の方はその約束を守ってるっていう訳なんだよ。 雄介だってそうだろ? 完全に約束を守ってるって事になるんだろうが……」
「あ……」
そう思い出したかのように口にする雄介。 多分、雄介はその望との約束の事を忘れていたのかもしれない。 だが今の雄介というのは逆にその約束事を無意識のうちにこなしてしまっているのだから、もう完全に忘れてしまっているのは無理も無いだろう。
「その口振りって事は忘れてたって事だな。 まぁ、そこはいいんだけどさ。 もう、雄介の場合にはそんな事、言われなくても身に付けちゃってるって事になるんだろうしな」
「まぁ、無意識っていうんか……もう、こう当たり前って感じがしとるしな」
「じゃあ、後は俺の方が意識せずに素直になるって事を努力すればいいって事になるんだよな?」
その望の言葉に雄介は反応しようとしたのだが、その事に触れてしまうと望が臍を曲げてしまいそうで、そこは突っ込まずに、
「ほな、そろそろ出ようか?」
「そうだな……これ以上入ってたら、逆上せてしまいそうだしな」
二人は湯船から上がると、脱衣所で着替え二階にある部屋へと向かうのだ。
その途中、望達の部屋の手前にある和也達の部屋からは何も音がして来ない所をみるときっともう寝てしまったのであろう。 そして望達は自分の部屋へと向かうと早速ベッドへと横になるのだ。
ともだちにシェアしよう!

