14 / 14

番外編②冬の幸せと雪うさぎ

 天気予報では、夜から今朝方にかけて雪が降ると言っていた。天気予報に当たり外れもあるが、このときは当たりだったようで、今朝起きて外を見ると雪が数センチ積もっていた。  雪が降ることも、積もることも珍しくないが、今回の積もり具合から小さな雪だるまくらいは作れそうだ。 「……にしても寒い」  窓を開けずにいても、外気の寒さが伝わってくる。ぶるりと身体を震わせ、綾人はベッドに戻ろうとしたが、背後から体温と柔らかな生地に包み込まれた。 「……昂」 「起きたら綾人がいなかったからな。寒いだろ」 「うん。でも、今は暖かい」  柔らかな生地の正体は毛布で、昂と一緒に二人でくるまっている状態だ。  二人で外を見つめ、しばらく沈黙が続く。 「――雪でなにか作るか」 「え? なに突然」 「いや、なんとなく」 「変な昂」 「俺のこと変と言った悪い子にはお仕置きだな」 「なにそれ」  綾人の耳元で囁きながら、昂が唇で耳をちゅ、ちゅ、と啄むように弄ってくる。 「ん、もっ、くすぐった……ごめんって、昂」 「綾人からキスしてくれたら許す」  昂のお願い事に綾人は腕の中で向きを変え、少し背伸びして昂の唇に触れるだけのキスをした。  外に出て、「寒い」「冷たい」と言いながら、積もった雪で雪だるまではなく雪うさぎを作った。  手の大きさが違うせいで、小さな雪うさぎと大きな雪うさぎ。耳と赤い目は、クリスマスで飾ったリースにある造花のヒイラギで代用した。 「ベランダに置けば、すぐには融けないよね」 「それはそうだろう。部屋と違って寒いしな」 「俺たちと一緒で二匹だから寂しくないしね」 「二匹って……雪だぞ」 「いいの」  ベランダの手すりに、作った雪うさぎを置く。  これでよし、と綾人は満足気な表情を浮かべ、部屋に戻った。部屋の中から雪うさぎの様子を見る。 「うん。小さくて可愛い」 「綾人、ココア作っておいたぞ」 「ありがとう、昂! 見て、見て。あんな感じで雪うさぎ飾ってみた」  ベランダの外を見るよう昂に促す。  寄り添っている雪うさぎの姿に、昂は微笑んだ。そんな昂の横顔を、ココアを飲みながら綾人も微笑んだ。 「手すりにちょこんと乗ってるの可愛いよね」 「綾人が俺の上に乗ってるときみたいだな」 「~~~~っ、ばっ、な、なにをっ……!」  飲もうとした瞬間、ココアが入ったカップを落としそうになった。  顔を真っ赤にして、綾人は昂を睨みつけた。 「……ばか、ばか、昂のばーか」 「ごめんって。綾人が可愛いから思い出したまでだ」 「……ばーか」 「ほら、雪うさぎたちが見てる。仲直りのキスしよう」 「……それ、キスしたいだけだよね」  そう言いながら目を瞑る綾人自身、昂に甘いなあと思った。  落ちてくる影。唇が触れた瞬間、幸せが染み込んでいくようだ。  雪うさぎに見守られながら昂とくちづけを交わし、綾人は心の中でまた来年も作れたらいいなと願った。  おわり

ともだちにシェアしよう!