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クリスマスイブの日、俺は仕事を終えてからケーキ屋に急いだ。 彼の好きなチョコレートケーキを買ってから帰宅することにしたのだ。 「ただいまー。」 先に部屋着に着替えて、リビングのドアを開けた。 「おかえり、そこ座って。」 先に帰宅していた彼は、俺に隣に座るように促した。 「うん、俺今日ケーキ買ってきたんだ。お前の好きなチョコレートケーキだぞ。」 俺の言葉と僅かに被るタイミングで、彼は言葉を発した。 「俺達さ、別れよっか。」 突然の彼の言葉に、手に持っていたケーキの箱が床に転がった。 「なっ!何でいきなり!?」 信じられる訳がない。 昨日まで平穏に幸せな日々を過ごして来たのだから。 「もう疲れたんだよね、俺。」 目の前に座る彼は、へらりと軽く笑って見せた。 そして、彼はそのまま部屋を立ち去ろうと立ち上がる。 「嫌だっ!いやっ……やぁっ…」 大粒の涙を流し、足下に縋っても彼が振り返ってくれる事は無かった。 ...................................................... あれから数年が経ち、地方へ転勤になり思い出の地を発つことになった。 出発は24日…彼に別れを告げられた日だ。 彼の姿を、別れの言葉を、俺は一時たりとも忘れたことなど無かった。 最後の最後に、もう一度部屋のポストを確認して行くことにした。 「…あれ?」 そこには、宛名も送り主も書いていない真っ白な封筒が入っていた。 手紙の内容は、俺と別れた後で彼が旅立ったことを意味するものだった。 「お前に…会いたい、よ……。」 一筋の涙が頬を伝った時、空から小さな白い雪が舞いだしていた。 END

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