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第5話
「小野寺さんに関係ないでしょ……ほっといてください」
だから、そう吐き捨てその場を後にしようと席を立とうとしたら、無理矢理腕を掴まれソファーに押し戻されてしまう。
「ふーん、関係ない……ね。関係なくもないかもよ?」
「は……?」
「睨まないでよ、美人が台無しだぜ」
そうだった、小野寺はこうして俺を『美人』とよく言っていた……
「手、離してください」
「懐かしいな、航平のその鋭い眼差し。ファインダー越しじゃなくてもゾクゾクしてヤりたくなる。……それに久しぶりにお前のそれ見たけど、やっぱりエロいよな」
「指刺さないでください」
「いいじゃん、これ褒め言葉だぜ?」
それにこういうセクハラ発言は日常茶飯事で、控えめに言っても俺はこの男がやっぱり苦手だ。
「小野寺さん、その腰に回してる手を離してください」
「素っ気ない態度も何年経っても変わらないな」
そう耳元に顔を寄せると腰に回した手に力が入った。
「これ以上何かしたら……!」
「たくっ、分かったよ……ま、またすぐ会うだろうし、今日は帰るよ」
「……え?」
「じゃ、またな、名波マネージャーさん」
これ以上は流石にと小野寺の手から身体を離そうとすると、そう俺にわけのわからないことを告げるとあっという間に喫煙所を出ていってしまい……
それからすぐあとに室内に入ってきたのは瞬だった。
「しゅ、瞬……っ、撮影終わったのか?ごめん……席外してしまって」
ざわついた気持ちを悟られないように出来るだけ平常心を装い問いかけると、瞬は俺の言葉を無視するかのように無言のまま歩み寄ってきた。
するとそのまま抱きつかれ顎を取られると荒々しく口を塞いでくる。
「お、おいっ!……ッ……ちょッ……ん」
そして息継ぎするのもままならないくらいの激しい口づけに、次第に身体の力が抜けていった。
今誰かがここに入ってきたら……
誰かに見つかったら……
ヤバい状況なはずなのに、身体のコントロールが効かない。
「……ッ……名波さん」
「な……ッ……んッ……だ……」
「朝の話の続き……今夜、マンション行ってももいいでしょ?」
それに、この状況で聞くなんて卑怯だと思った。
身体はこいつのキス一つでこんなにも熱く疼いてしまっているから。
ダメだと口にする前に漏れる自分の甘い声を飲み込むよう、更に深く激しい口づけを仕掛けられる。
「んんッ……しゅ……ッん……」
「ここ、俺しか知らないと思ってたのに……」
そしてキスの合間にうわ言のように何かを口にすると閉じた瞼を親指の腹でなぞられ……
そのまま指先が頬へと滑り落ちるともう一度せがまれた。
「ねぇ、行ってもいいでしょ?」
甘えるような、でも大人びた声で囁く声に、もうここでこれ以上されるくらいなら……と、僅かに残る理性と引き換えに結局俺は小さく頷いた。
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