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第8話
「……ッ……んんッ」
「お前、ノンケだって言ってた割に感度良くないか?」
「知らッ……な、んッ……」
そのままベッドに押し倒されると小野寺は俺の上にのしかかりながら首筋を舐めあげてくる。
気持ち悪いはずなのに舌先の感覚が次第にそれを麻痺させて、気づくと俺は甘い声を漏らしていた。
「……ッ……あの若いのに開発されたのか?厭らしい声出しやがって」
「……ッ……あぁ……ッ」
苛立ちを剥き出しにしながら荒々しく求められ、いつの間にか小野寺の手は下半身へと伸ばされる。
そして、形を変えた自分のモノを押し付けながらカチャカチャとベルトを外す音が響いてきた。
そのままファスナーを下ろして下着の中に手を滑り込まれると身体がビクっと震えてしまう。
何かが、違う……
瞬に触られる時と何かが違う。
行為自体は同じなのに……
触られながら頭の片隅でそんな思いに駆られる。
瞬ならこんな触り方はしない。
もっと、こう……優しくて、それに、触りながらも……
『────名波さん……ここ熱いね』
瞬……
「しゅ……や、だ……ッ……」
「航平?」
「やめろッ……!」
瞬との行為を思い出してしまった俺は何故か物凄い嫌悪感を抱き、気付いたら小野寺を突き飛ばしていた。
すると、その次の瞬間室外からドアを物凄い勢いで叩く音と「名波さん!」と叫ぶ声が響いてきた。
まさか……
そして急いでドアに駆け寄り鍵を開けると、焦った顔の瞬が立っていた。
「……どうしてここに」
「説明は後。とりあえず中入れて」
ズカズカと室内に入り、瞬が小野寺を見つけるとそのまま胸ぐらを掴み捲し立てるように声を荒らげた。
「あんた、名波さんに何したんだよ!」
そんな今にも殴り掛かりそうな勢いに俺も気が気じゃない。
「別にお互い納得しての行為なんだからそんな目くじら立てることないだろ」
「納得?あんたは名波さんを脅して手に入れようとしただけだろ!」
「だったら?航平は君を守る為だったのにこれじゃ台無しだな」
そこまで言うと小野寺が俺に「なぁ?」と同意を求めてくる。
その返事を躊躇っていると瞬が再び口を開く。
「別に俺はモデルなんかどうだっていい。モデルなんかより名波さんの方が大事だ」
「瞬、何言ってんだよ!」
「なんだよ、契約上とか言いながらやっぱりお前らできてんじゃん」
「違うっ……」
「名波さんは黙ってて!俺は名波さんの事ずっと憧れてて、近くにいたくて……名波さんみたいになりたくて……だからモデルになった」
瞬が口にした言葉に一瞬頭の中がフリーズした。
そんな話初耳なんだけど……
「そんなに大事ならもっと早くに航平に伝えたらよかっただろ、こんな形じゃなくて」
「伝える時は一人前になってからと思ってたから」
相変わらず何も言えないままの俺。
するとそんな俺の代わりに小野寺の声が室内に響いた。
「あーあ、もういいや。なんかお前ら見てたら俺が惨めに思えてきた。だからもう航平の事は諦める。それにこのデータも消す」
思いもよらぬ瞬の告白にしつこかった小野寺も、諦めたようにそうため息混じりに吐き捨てると、目の前で写真を燃やし、データを消すとこのまま部屋は使っていいからと静かに告げ早々に帰って行った。
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