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プロローグ
人はいくつまで純粋な心を持ったままでいられるのだろう。
産まれたときの記憶はもちろんないけれど、産まれてきたことを疑問に思ったり後悔しながら誕生する人は居ないだろう。
一日一日を誰かの手を借り、声をかけられ、大切に育てられたからこそ人は成長し、生きていくことができる。
何しろ、産まれたばかりのときは、立つことも、話すことも、食事ですら人の手を借りないとできないわけだから間違いない。
ビー玉程度しかない胃袋。大人であれば一口にもならないその量を何分何十分とかけて満たし、数時間後にはまた空腹。
初めは泣くことしかできず、次は笑うことで伝えられる意思。まるで、要求は必ず通ると知っているかのように無邪気な心。
自ら動くことはできず、抱き上げて運ぶ時さえ慎重さを要求される。座らない首、外れやすい関節、柔らかい頭。
上げればキリがない。
これだけ手をかけ、目をかけ、気にかけられて育てられているのだから自分の存在意義など疑う余地もない。
人は愛されるために産まれてくるんだ。
僕も例外なくそうやって生まれ、疑うことなんて知らなかった──。
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