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Ⅵ 君だから 【完】

硝煙が燻る。 「なぜッ」 「愚問です」 拳銃のない左手が銀縁眼鏡を持ち上げた。 「私をお買い上げになったのは貴方です。櫂」 「でもッ」 俺はこの男 都辺警視総監を買った。パパのゴールドカードで。 パパがなんでも買ったげる!……って約束したから。 「私の購入要件は、貴方が幸せになる事」 そして、この条件は…… 『あの御方への我が忠義でもある』 「一つ教えて差し上げましょう。私の射撃ライセンスはS級です」 ハラリ 粉々に割れた黒い仮面が赤い絨毯に落下した。 ハラリ、ハラリ 黒い花びらのように…… 額に黒髪が垂れた。 総理が生きている。 銃弾は仮面だけを掠めていた。 覗いた瞳の色は黒 「どう…して」 「政府専用機から降りたのは、総理の影武者。私です」 いま貴方の目の前にいる男こそ、 「日本国 第99代内閣総理大臣 益城省吾……否」 『奥津 セイゴ』 光と陰は一つ 総理が大使で、大使が総理~!? どういう事?? 「『益城省吾』は存在しない。 身の安全を図り国政改革を進めるため、奥津総理が作った架空の人物です」 益城 省吾と奥津 セイゴは同一人物 一人二役だったんだ。 《黒陰の使徒(シャドーサーヴァント)》が操っていたのは日本! パパが内閣総理大臣!! カタン ドアの音にハッと意識が呼び戻された。 「それではどうぞ、お幸せに」 銀縁眼鏡を持ち上げた影が去る。 「……かー君」 仮面のない素顔の総理大臣 「君を幸せにしたくて、でも君は私を嫌ってる……それでも諦めたくなかった。 君は、私の大切な息子だから」 「……」 「かー君?」 「……」 「怒ってるかい」 当たり前だ。 俺はおこだ。 「それだけ?幸せにしたいのは息子だから?」 口許が笑んだ。 俺が見た事もない妖艶な雄の色香漂う微笑を、口角に刻む。 「君が大切なΩだからさ。私だけのΩにしたい」 「パパなんて嫌い!」 「かー君?」 「大嫌い!」 「分かってる」 「違うよ。俺が結婚したいのは、あなた! 奥津 セイゴだ!」 ………………あ 言っちゃった。 パパと結婚なんて無理…だ。 でも。益城総理は俺と結婚しようとして、総理は大使でパパだから~? 「私もだよ!!」 むぎゅー 「ギャー」 「結婚しよう。今日から君は私のΩ 奥津 櫂だよ!結婚しても名字は変わらないね」 「く、苦しい~」 パンパンパンっ 息止まる~ 「分かった!ピースがしたいんだね!パパと一緒に、せーの。ダブルピース✌✌」 「ちゃうわーッ」 「結婚式の記念写真は、ちんこピースしようねー!!」 「せんわーッ」 パパの動きが止まったぞ、どうした? 「かー君は子供だね。ちんこピースのやり方、分からないのかな? 勃起したちんことちんこを重ねて、イエーイ✌ 愛を誓うんだよー♥」 なにがイエーイ✌だ! 公衆変態ワイセツ物がァァーッ 「あほかーッ!!」 つんつん 膨れた頬っぺた突っつくな、総理。 「新婚旅行どこがいい?パパがどこでも連れてったげるよ」 「今まで放っといたクセに」 「あぁ、その事なんだけど」 「ギィヤアァァァーッ♠」 なにポケットから出してんだーッ 「ビューティー★カイで作った等身大私自身!!完成したよ~♥ かー君にプレゼント♪結婚式の引出物にしようかー?」 変態総理ィィイーッ♠♠♠ ……チュっ 「私の新たな一面を知って、ギャップ萌えだね」 チュうぅーっ 「萌えキュンしちゃったかな?」 「変態に変態かけても変態だァーッ」 それでも君は…… 「私が好きなんだろう?ねぇ、かー君♪」 君が好きだよ どうして? ……どうしても。 「君のαだからさ」 αのパパは…… 「我が儘に貪欲に君を手に入れる。愛してるよ」 ぎゅっ♥ 《おしまい♪》 「おそろの指輪、はめようね。櫂」

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