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幼馴染-osananajimi-3
「んじゃ、行ってきます。また後で、樹矢。」
「うーん…行ってらっしゃいー…。」
今日は楽しみにしていた樹矢の撮影日。俺は準備があるため、何時も樹矢より早く出る。
寝起きの樹矢が見送る。と、玄関まで来てくれた。
ちゅ…
眠たそうな樹矢の目を覚まそうとキスをした。
表情は一気に明るくなり眩しい笑顔を俺に向ける。
「しゆちゃん!後で!楽しみにしてるね!」
手をブンブンと振っている樹矢を横目に俺は玄関の扉を開けた。
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「お願いしまーす。」
撮影スタジオでは最初に撮る雑誌のスタッフさんの挨拶が飛び交い、準備が進んでいた。
まずはダークな雰囲気から。っと。
黒い背景にゴージャスな置物、衣装はそこに居ても馴染むようなフォーマルな物を選んだ。
そろそろモデルも来るかな…。
時計を見つつ今日のスケジュールを再び確認する。
「瀬羅さん入りまーす。」
「お願いします。」
スタッフさんの声にドキッとした。
毎回この声掛けに俺はドキドキする。
樹矢はどんな着こなしで、どんな表情を俺に向けるんだろうと心臓の鼓動が高鳴る。
コツコツコツ……
革靴のせいか、足音が何時もより大きく響き、俺に向かって近づいてくる。
コツコツ…コツ……
俺の視界に樹矢が現れ、目が合う。
「今日もよろしくお願いします、須藤さん。」
彼はそう言って笑い掛けてくれた。
白いシャツに黒いジャケット、ネクタイもキュッとしっかり締めている。
体温が一気に上がったのが分かった。高揚してる…。
くそっ…カッコイイな…っ心臓がうるさい…。
「よろしくお願いしまーすっ。」
樹矢に見惚れているともう一人のモデルさんがスタジオに入ってきていた。
「あっ、こっちこっちー!」
樹矢が手を振って呼ぶ。
コツコツコツコツコツコツ…
樹矢とは違い、足早に音が近づき目の前に現れる。
「おはようございます!杠葉鶫 です。今日はよろしくお願いします!」
目の前に現れ、そう元気に挨拶した彼は、しばらく疎遠になっていた俺の幼馴染だった。
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