162 / 227
ガラス玉-garasudama-2
「この中にあるガラスの玉がね、なんか俺みたいだなって思ってさ。」
テーブルに瓶を置く。コツっと軽い音を鳴らして立った。それを優しい目線で見つめる樹矢と交互に俺は見る。
「そーか?」
「うん。それでこの瓶はしゆちゃん。」
結露して水滴を纏う瓶を樹矢は指先で優しく撫でてキリの無い水分を拭っていく。
「それが俺?」
両手で自分の瓶を見て握ると、首を軽く傾げる。
「そ、ガラス玉が傷ついても俺はしゆちゃんっていう器に守られてるの。中で囚われてるように見えて、上に出口はあるから外に行けるけど行かない。いつも守られてる。しゆちゃんが俺の生きる糧だから。」
「樹矢を守ってる実感は無いけどな……。」
「そこがしゆちゃんが瓶なワケ。」
俺の言葉にすぐ、答える。
樹矢はまたラムネを飲み、テーブルに置こうとするとカランっと軽いガラス同士が当たる音が響いた。
「どっちもガラスなんだよね。お互いでお互いを傷つけ合う事も出来るし、外からの攻撃で簡単に壊れる事も出来る。」
壊れる時は一緒かな……? そんな危ない道を俺達は選んで進んでいる。未来が見えそうで明るいとは言い切れないけれど、樹矢がいつか欠けたり割れたとしても欠片を捨てずに俺の器に散りばめて。
俺がその欠片をキラキラに輝かせてあげる。
「大丈夫だよ。樹矢。」
残っていたラムネを飲み干して手に持ったまま中のカラカラと転がるビー玉から目を離さない。
(きっと壊れる時は、二人一緒だ……。)
――
―
ともだちにシェアしよう!