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秋桜-cosmos-3

行く為の道が分かれば後は辿るだけ。 携帯で確認しつつ、急ぎ足で進んでいく。 もう、直ぐそこ。 「いい時間だな。」 信号待ちに空を見上げるとさっきよりも濃い、完璧な夕暮れ時になっている。これで今日一つ目の照明はバッチリ。後はモデルとロケーション。 赤から青へと変わり、横断歩道を渡り見えたのは公園の入り口。沢山の木々が生い茂り、公園全体を囲っている光景は、大事に中を守っているかの様な印象を受ける。 人が歩けるように舗装されたアスファルトを道なりに進む。両サイドに立つ大きな木々は、わさわさと風により音を鳴らす。 自然と公園の奥へ導かれたようだった。 一点、明るく照らされて白くなった場所へ踏み入れれば、視界が一気に開けた。 「う…わぁ…。」 隣に立つ鶫の心の声が漏れる。 目の前に広がるのは、無数の黄色い花畑。 その色はとても柔らかく優しく景色をふんわりと色付けて、吹く風に花が一斉に揺らめいている。 「この花って…?」 「コスモス。ちなみに黄色いコスモスの花言葉は"野生の美しさ"。」 (っても黄色いコスモスは人為的に作られたものだけどな。) 「こんなに花が綺麗なんて思った事無かった。朱斗ありがと、連れてきてくれて。」 やっと視線を俺に向ける。 その表情はとても優しく、鶫自身がコスモスの様に美しく笑っていた。 「さ、撮ろうぜ。」 カメラを構えて鶫をファインダーを通して捕らえる。

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