「っ、―――優しくする。必ず、優しくするっ」 　ぎゅうぎゅうと締め付けるように抱き締められ、苦しい。でも、今はその苦しさが心地良かった。 　僕は虎君の背中に手を回し、心に留めておけない想いを吐き出すように「愛してる」と告げた。 「葵……。俺も愛してる。愛してるよ……」 　力を緩め、唇にキスをくれる虎君。これまでのキスと変わらないはずのそれは、何故か今までで一番甘く感じる。 　僕は閉じていた目をゆっくり開き、熱の籠った視線で僕を見つめる虎君に今度は僕からキスを贈った。 　少しでも長くキスしていたいと思っていたせいか、唇に吸い付いてしまう僕。すると虎君は僕の拙いキスに応えるように舌で僕の唇を舐め、そのまま深く口付けてきた。 　優しく舌を絡めてくる虎君は僕の腰に手を添え、自分の方へと引き寄せてくる。 　密着すればするほど感じる、虎君の昂ぶり。そして、それに倣うように僕の下肢も反応を見せて……。 「！　んんっ……、あっ、とらく、さわっちゃだ、めぇ」 「可愛い……、葵、もっと可愛い声、聞かせて……？」 　快楽に反応した下肢に添えられた虎君の手はそのまま僕のものを包み込み、柔く扱いてくる。 　明確な快楽に身体を震わす僕。虎君は唇を解放すると今度は頬に、鼻先に、目尻にキスを落とし、そして僕が弱い耳元を舐め、噛んできた。 　放された唇からは自分のものと思えない甘ったるい声が漏れ、それはバスルームに響いてベッドルームにいた時以上に僕の羞恥心を煽った。 「あっ、んっ、とらくっ、とらくぅ……んん……」 　気持ち良すぎて下肢が溶けてしまいそう。 　虎君の手が動く度嬌声が口から零れて恥ずかしかったけど、その羞恥は次第に遠ざかり、かわりにもっと気持ちよくなりたいと快楽を追い求めるようになる。 「可愛い……、エッチな葵、凄く可愛いよ……」 　耳のすぐそばで聞こえる荒い息遣い。それは押し殺したような声と共に僕の脳に直接響いて新たな快楽を生んだ。 　言葉にならない嬌声の合間、虎君に大好きだと伝える。虎君だけを愛してると、何度も、何度も……。 「俺も愛してる。葵だけ、ずっと葵だけを愛してる」 　早く僕を抱きたいと囁く虎君に、僕は早く抱いてとしがみつく。それがどれほど今の虎君を苦しめる言葉か分からず、もっと深く愛し合いたいと何度も何度も強請った。 　虎君は快楽に訳が分からなくなっている僕の言葉に触発されてか、僕を抱き寄せていた手を背骨に沿って滑らせ、そのままお尻を揉んできて……。 「！　ゆ、び、ゆびぃ」 「無理矢理挿れたりしないから、だからちょっとだけ我慢して」 　閉じた入り口を指の腹で優しく撫で、時折押して僕の身体を窺う虎君。 　初めての経験に緊張に強張ってしまう身体。すると虎君は耳元で切なげな声で力を抜いてと囁いてきた。 　でも、力を抜いてと言われて抜けたら苦労しないと言うもので、意識すればするほど身体は逆に強張ってしまう。 「葵、いい子だから……」 「わかんないぃ……どうしたらいいか、わかんないよぉ……」 　虎君と愛し合いたい。だから虎君が言った通り体の力を抜きたい。でも、どうしても思うようにできない……。 　自分が情けなくて涙声で訴える僕に虎君は分かったから泣かないでと唇を寄せてくる。 　目尻にキスを落とす虎君は少し苦しげな声で僕に快楽に集中するように言うと、そのまま欲に膨らんだ僕の局部を扱きあげた。 「とらくっ、んっぁ」 「そう……上手だよ。そのまま気持ちいい事だけ考えてて……」 　言われるがまま身体で一番熱を帯びている箇所に意識を集中すれば、自分とは違う熱を感じる。それはもちろんお湯じゃなくて、虎君のだ。 　虎君は大きな手でベッドでしてくれたように自分のものと一緒に僕のものを扱きあげ、時折先端を指でぐりぐりと押して刺激して強烈な快楽を生み出してくれる。 　頭が真っ白になりそうなほどの快楽に神経が焼き切られそう。僕はしがみついていた虎君の背中に爪を立て、過ぎる快楽に気が遠くなってしまう。 （だめっ、あたま、ばかになっちゃう） 　声に出すだけじゃなく、頭の中でも気持ちいいと叫ぶ自分。 　僕は、この強烈な快感を脳に刻みつけられそうで怖いとさえ思った。でも恐怖を感じたのは一瞬で、またすぐに快楽に意識が飲み込まれてしまう……。 「！　ぁああっ！　やっ、とらく、だめっ、おしり、だめっ、だめぇぇっ」 「痛い？　それとも、気持ち悪い？」 「そんな、わ、かんないっ」 「なら、どうして『ダメ』？」 　強烈な快感のさなかに感じる、内側に触れられる感覚。 　そしてなおも前を扱き続ける虎君に僕はさっきまでの緊張が嘘のように身体から力が抜け、虎君の指をより奥へと誘う。 「とらくっ、やだっ、やだぁ」 　奥へと飲み込んだ虎君の指が引き抜かれ、そうかと思うとまた内側に押し込まれる。 　生まれる違和感に怖いとしがみつく僕。すると何故か僕の身体を内側から撫でていた虎君の指の感触がより鮮明になって、込み上がってくるのは逃げ出したくなるほどの恥ずかしさだ。