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第1話

ひとりぼっちって辛いもんだなぁ〜。 安アパートの片隅で一人ポツンと天井を見上げる。 完全に大学デビューを逃した陰キャが一人、何をするわけでもなくただ生きていた。 黒髪でもさもさとしたイカニモな陰キャには人権がない。 バイトも単発ばかり、サークルは文化系で集まりは少なく、一人暮らし。 ただただ孤独な大学生だった。 長い夏休みを終えて秋学期が始まると実家暮らしの反動で寂しさが増幅されるのだった。だんだん寒さも強くなっていき人肌恋しくなっていたその頃だった。 中高一貫を共にした同じ大学の友達はうまく大学デビューして充実した毎日を送っていた。 たまに麻雀サークルで遊んで、駄弁って暇ならどっちかの家に泊まってゲームするくらいの関係だったが、 今回は違った。 その時は酒が入っていた。 言い出してきたのはあっちからだった。 いつも騒いでる彼らしくない。なにかモゴモゴと口をうごかしている。そうしてようやく喋り始めた 「俺、高校の時からお前のこと好きだったんだよ」 ????今なんつった??小さく唇を震わせてなよなよと話す彼は少し懐かしい気がした。 「それなんていう冗談?悪酔いはやめてくれよ」 「嘘じゃない。俺はバイ。」 「そこで韻踏むな。」 いきなりのカミングアウトで、もう脳が追いつかない。 ソファーの上ででかい男が二人ゲームしてたはずなんだ。なのにどうして??? 近い。重い。 スリスリと髪を撫でてくる。 懐かしい距離感だ。中学生の時なんてもっとべったりだったっけな。 「本当に好きなんだよ...。じゃないとわざわざ麻雀サークルなんか入ってないよ。俺麻雀なんてわかんなかったし」 「本気で言ってるのか??」 「本気だよ。覚えてる?高2の誕生日プレゼント。 シャンプーあげたじゃん。あんたの髪を俺の好きな匂いにしたかったんだ」 マジかよ...そんなの今知りたくなかった。 酒入ってるだろ?? 嘘か本当かわからないじゃん そう言ってアイツが体の匂いを嗅いでくる。これ昔よくやられたな。匂いフェチかよ..恥ずかしいな。 「酒臭いね。」 「当たり前だろ」 久しぶりの体温だ。 あたたかい。 ダメだ。寂しさで頭がおかしくなってるんだ。 もうちょっとこうしてたいな。 「今更ごめんね。ずっと好きだった。ただそれだけ。 嫌なら嫌って言ってくれれば、もうそれ以上は....」 いや、なんで勃ってるの?意味わからん、怖。 「全部マジで言ってる???本気ならいいよ....」 「本気だよ」 つかなんで勃ってるのさ。家来てからエロいシーンあった??こいつ俺で?????? 顔は好きだし、頭いいから頼りになる。 一緒にいて楽しいし、よく気にかけてくれる。 陰キャは優しくされるとコロッといってしまうんだ。 ごめんな。わかってる若気の至りと男子校と酒のせいだよね。それでもいいんだ。 楽しかった頃みたいに懐かしい暖かさと、 大学生になったからかな一線を越えようとしてる今。 寂しさを埋めようとしてるのはわかってる。 そのままベタベタとソファーの上で互いに触れ合って。なんとなくその気になって。ちょうど道具も揃ってたからノリと勢いでやってしまった。 流石に挿入されたはいないけど。 そのまま寝オチしてしまった。 「起きて〜。起きてよ!!! 1限英語じゃん!!!!遅れるぞ!!!!」 彼の声で目覚める。 アラームの音じゃない。 あぁ 彼が起こしてくれた。 それだけだけど弱った心に染みる。 それから毎週月曜日はこんな感じだ。 土日にすることして、月曜日は彼が起こしてくれる。 苦痛な月曜日が少し楽しみになった。

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