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第41話

side一縷 数か月が経過した。 蒼のお腹の子は順調に成長し、今や蒼のお腹はだいぶ大きくなってきた。 もうすぐ臨月。 ちょっとしたことでも蒼は大変そうだった。 蒼の負担にならないようにあらゆる物事を簡略化した。 掃除はロボット掃除機を購入して、掃除機をかけなくて済むようにした。 買い物は宅配サービスを契約した。 家事も苦手だけど、俺が代わってやるようにした。 蒼はかなり申し訳なさそうにしていたけど、今は体が大事。 一人の体じゃないからな。 俺の仕事の方はいつでも蒼の出産に駆け付けられるようにほとんどを部下に任せてしまっている。 彼らの仕事量を増やしてしまって申し訳ないとは思っているが、どうやら部下に恵まれたようだ。 『すぐにでも病院に駆け付けてあげてください』と俺の仕事を分担して引き受けてくれた。 数日後、始業時間が始まって数時間後蒼からメールが届いた。 【陣痛来たっぽい】 あまりにも驚いてしまって携帯を落としてしまった。 急いで拾って電話をかける。 「もう病院行くか?」 「まだ大丈夫だと思う」 「俺、帰った方がいい?」 「まだ間隔長いから大丈夫だよ」 「帰ってくるまで待ってるよ」 「入院の荷物は玄関に置いてあるんだけど、場所分かるか?」 「分かるよ」 「なるべく急いで帰るから」 「うん。待ってるね」 「何かあったらすぐ連絡しろよ?」 「分かってるよ。お仕事がんばって」 電話を切ってからも、俺は上の空で全然仕事が手につかなかった。 『室長、帰ってください』 唐突に部下が言ってきた。 あまりにもいきなりだったので、ポカンとしてしまった。 『旦那さん、心配なんでしょう?全然仕事が手についていないようだし、俺らも心配なんで、帰ってください。あと、ちゃんと一週間の有給申請もしてからですからね』 『そうですよ。室長がそんな様子じゃ私たちも仕事が手につきません』 皆大きく頷く。 「全然仕事終わってないから、これだけでも終わらせて…」 『あとは俺らでやるので、室長は帰ってください』 「お前たちの負担が増えるぞ?」 『無事産まれたら翠玉庵の懐石、奢ってください』 『そうですね。それで全部チャラにしましょう』 皆満面の笑みだ。 翠玉庵と言えば、ここらでは老舗中の老舗な上に、超高級料亭だ。 まぁ、仕方ないだろう。 「分かった。皆、すまない」 『室長、ここはすまないじゃないですよ』 「…ありがとう」 『いえいえ。早く行ってあげてください。きっと心細いはずだから』 「お言葉に甘えさせてもらう」 俺は急いで帰り支度と有給申請を行い、帰宅した。 帰宅すると、蒼がこれから病院に向かう準備をしていた。 「病院に行くのか?」 「あれ?いち、もう帰ってきたの?」 「仕事が手につかなくてな…」 「ごめんね。まだ言わなくてもいいかなと思ったんだけど…」 「いや、教えてくれなくて急に入院したと言われたらもっと心配したから、言ってくれてよかったよ」 「ごめんね」 「これから入院か?」 「うん。病院に連絡したら来てくださいって言われた」 「それじゃ、一緒に行こうか」 「うん」 俺は蒼の荷物を持って二人で病院に向かった。

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