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落ちこぼれのベルネ
この世界には、魔王というものが数百年に一回の周期で生まれ出でる。
魔王という存在は『恨み、怒り、悲しみ、憎しみ』そういった感情が蓄積した澱が具現化したものである。その澱を定期的に浄化する力が働いているからだと言われているけれど、それを知るのは神様ぐらいだと思う。
魔王が生まれると、アルタヴォカシオン大神殿(長いから以下、大神殿)の大神官様達の有難い力を借りて、世界主要5ヵ国 が順番に勇者様を異世界から召喚することになっている。
その勇者様にはこの世界の魔王を打ち破って頂くことになる。というのも勇者様には神様より特別な加護が付けられ、その力によってのみ魔王を倒しせしめることができるからだ。
神頼みならぬ、勇者頼みなのである。
歴代の勇者様はその加護の事を『ちーと』と呼ばれており、魔王退治には『はーれむ』が不可欠であるともおっしゃっている。
なぜこんなに詳しいかというと、不幸なことに、僕が生きている時代に魔王が生まれてしまったからだ。
今の話はぜーんぶ僕が受けた、魔王の発生が観測されると必修科目となってしまう『勇者史学』にて学んだこと。
その講義では歴代の勇者様の名前や魔力属性、使っておられた武器防具、はたまた勇者様の性格やハーレムの人数と構成まで勉強するのである。
こんなの全く必要ないのに、なんでこんなことまでするのかというと、異世界から来た勇者様は十人十色で、責任感のある方から女の子のお尻ばっかり追い掛けている方、部屋に引きこもって出てこない方などなど、その時代時代で勇者様の扱いが非常に難しかったからだという。
簡単にいうと『どんなのが来るか分からないから、覚悟しとけよ』と言う警告である。
――しかし、不幸なことはそれに留まらなかった。
そう、僕はかの『はーれむ』の一員に選ばれてしまったのだ。
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