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    そして、旅も華僑。  魔王領に入る直前に立ち寄ったエルフの隠れ里でそれは起きた。  エルフといえば線が細くて中性的なイメージがあったけれど、ムッキムキのガチムチエルフもいた。  そのガチムチイケメンエルフは若き族長で、強い奴も同志として好きだけれど、か弱い奴が愛しくて仕方ないという。幸か不幸か、そのか弱い奴と言うのに僕が嵌ってしまった。  隠れ里を案内する際、全部僕を見つめながら説明してくるし、ずっと横を離れない。  イケメンに見つめられるのって恥ずかしい。自分の顔が粗末すぎるから、余計に。  一通り案内をしてもらって、他の家よりも一回り大きい族長の家に通される。家って言ってもなんだか丸太を組んだ簡易的な小屋といった方が良いかもしれない。  そこでお茶を頂いていると、 「ベルネ。私の妻にならないか」  と、イケメン族長が僕の手を握った。  ふわぁ…直球。  皆、一瞬僕の名前だと気付かなかったようだけど、族長が手を握った事で僕だと認識したみたいだ。  その女性陣からのじっとりとした視線が突き刺さる。勇者様がいるとは言え、プライドの高い女性陣は僕みたいな冴えない人間が贔屓されるのが不愉快らしい。 「いえ、僕は勇者様と共に旅を続けなければならないので」 「貴方なんて居ても居なくても変わらないわ」 「そうよ、そのインベントリの所有権の書き換えさえすれば、アンタなんか用なしだって」 「足手まといがいなくなるのは良いことだ」 「困ります! 僕の使命ですので、途中で投げ出すわけにはいかないのです」 「一度も戦ったことニャいのに何が使命なのニャ?」 「ハヤトもそう思うわよね?」  話を振られた勇者様を縋る様な目で見たけれど、興味なさそうに耳をほじってた…。 「あー? 好きにすればいいんじゃねぇ?」 「勇者殿はこう言っておられるぞ。ベルネ、一晩一緒に過ごさないか。それでベルネが無理だというなら諦めよう。――どうだろうか勇者殿」 「どーぞどーぞ。一晩でも二晩でも好きなだけどーぞ」  えええ…。ひ、ヒドイ。  僕頑張ってたと思うんだけど、勇者様には全然響いてなかった?  ショックを受けてる僕をそっちのけで、お礼にエルフの宝を、とかなんとか言ってる。  宝貰うためにも絶対に断るなよ、っていう女性陣の無言の圧力に僕は負けた。    

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