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「じゃあ、始めていこっか。よろしくね」
「は、はいっ」
「ボブでいいのかな?」
「そう……ですね。でも、ハネないなら大丈夫です」
「わかった。じゃあ、切っていくね」
櫛で髪を整え、長さを揃えていく。伸びた毛先がバラバラで、新人が切ったような毛先だった。
「結構バラバラだね。美容師さん若かった?」
「はい。男の人で……」
「そうか。若い男は女の子がどうしたいかわかってないからね」
「わかります! クラスの男子もすっごい子どもで。女心全然わかってないんですよー」
女心。確かにそれは女にしかわからないものだが、男も少しくらい理解してあげた方がいいとは思う。
「美容師さん、何歳ですか?」
「僕? 三十三」
「え!?」
鏡越しにびっくりしたような顔で見つめられる。橙里は実年齢より若く見られることの方が多く、三十路だと言うと大抵驚かれる。まあ、悪くない。
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