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「蒼樹」 カットを終え、カウンターにやって来た戸園に声をかける。羽村は奥で電話の対応をしており、今しかないと思ったからだ。 男前な顔が優しく変わり、きっとこういう所に惹かれたんだと思う。 「どうかしはったんですか?」 「んー、ちょっとな。とりあえず話そうか」 「怖い。なに言われるんやろ」 おどけるように言い、橙里の隣までやって来た。柔らかい柔軟剤の香りがして、不思議と安心する。 「これは僕が勝手に気になったことだから僕に訊かれたってことは言わないで欲しいんだけど」 「はい」 「……彼女いる?」 いきなり羽村のことをどう思っているか訊くのは不自然なので、まずは導入する。すると、戸園が苦笑した。

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