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エピローグ
「住吉くん」
と、部長のイケボに呼ばれて、住吉はきゅるっとキャスターを動かし、勢いよく席を立った。
芦屋部長は今日も男ぶりが際立つ上質なスーツに身を包み、革張りの椅子にゆったりと座っている。
その彼の手には、住吉の出した企画書があった。
住吉は小走りで芦屋のデスクの前へと進んだ。
あの日……。
住吉が、酔いつぶれて寝ている芦屋の横で、彼の奥さんを抱いてしまったあの日から、すでにふた月が経過している。
チーム芦屋のルーキーとして、住吉は日々奮闘した。
仕事に対するモチベーションは、この上なく高い。
なぜならば……。
芦屋の妻とうっかり事に及んでしまった住吉は、帰り際に、
「住吉さん」
と奥さんに呼び止められた。
振り向いた住吉の視線の先には、髪を少し乱した奥さんが居て……。
彼の着ているTシャツの、乳首の辺りは住吉がそこを吸ったせいで濡れているし、チノパンの下はノーパンで……中出しをした後孔がどろどろになっていることを知っているしで、またムラムラしてしまった住吉であった。
奥さんの体はどこも敏感で……なによりも孔の具合が半端なくイイ。
住吉が中出しすると同時に奥さんもオーガズムを味わったりする様などは、本当にエロいのひと言に尽きた。
本当ならもっと抱きたいし、もっと一緒に居たい。
しかし彼は、上司の妻。
住吉など手の届かぬひとなのである……。
もう二度と会うことなどないかもしれない、と感傷にも似たさびしさで、住吉は奥さんを見つめた。
すると奥さんが、仄かに上気した目元をやんわりと細めて、うつくしい微笑を見せた。
「住吉さん。夫はいつも、業績を上げた部下の方たちを、よく飲みに連れて行っています」
「……え?」
「新規の契約が取れたり、企画書が通ったり、プロジェクトが終了したときなども……折に触れて、よく飲みに連れて行ってるようですよ」
住吉は目をパチパチと瞬かせた。
それは、つまり……。
住吉の、頑張り次第では、部長と飲みに行く機会があって……。
そして酒に弱い部長はまた、酔いつぶれて……。
住吉が、部長を家まで送ることができたならば、もしかしたら……。
もしかしたら、また、奥さんと……。
奥さんがさらりと髪を揺らして、にっこりと笑った。
「住吉さん。……また、お待ちしています」
「……はいっ!!」
住吉は、夜中だと言うのに玄関先でものすごく元気な返事をしてしまったのだった……。
そうして奮起した住吉は、めちゃくちゃ頑張った。
その頑張りとやる気は企画書へと詰め込まれ。
芦屋へ提出したその企画書は……この度……。
芦屋が、手に持った書類を、住吉へと軽く振って見せた。
ごくり、と住吉が固唾を飲んで上司の言葉を待つ。
緊張に体を硬くする住吉の視線の先で、芦屋がふわりと破顔した。
「よくやったな、住吉。おまえの企画書が通ったぞ」
芦屋のその言葉に、部署内で歓声が上がった。
「よかったな、住吉」
「初手柄じゃないか。この調子で頑張れよ」
チーム芦屋の先輩たちから労いの声がかけられる。
住吉は一瞬ポカンとした後、己の努力が報われたことを理解し、ガッツポーズでその喜びを表現した。
「や、やったぁ!」
小躍りせんばかりの住吉の肩を、立ち上がった芦屋がポンポンと叩いた。
「本当によく頑張ってくれた。おまえの企画に沿って新規プロジェクトを立ち上げる。もちろんおまえにも加わってもらうぞ」
「はいっ!」
「よし。じゃあ、頑張ってくれた部下の慰労だ。今日は飲みに行くか。もちろん、俺の奢りだ」
部長からのありがたい提案に、住吉は一も二もなく飛びついた。
「はいっ!!」
大きく首を振って頷いた住吉は、まったく気付いていなかった。
芦屋がこっそりと、含み笑いを漏らしていたことを……。
END
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