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第4話

まずは店舗応援に関する依頼書を作るかと考えたところで、斗真のデスクの電話が鳴った。 内線電話特有の着信音だった。 「はい、小泉です」 『小泉君?笹本だけど』 「笹本さん、お疲れ様です!」 声が自然とワントーン上がる。 笹本は総務部所属の職員だ。 斗真が想いを寄せていた相手でもある。 結果的には振られてしまったのだが、今でも笹本の声を聞けばはっとするし、姿を見れば胸が高鳴る。 けれどもういい加減諦めなければいけないということもわかっている。 総務の笹本、経理の渋澤。 この二人が付き合っているのは斗真しか知り得ない事実だから。 ぐっと込み上げそうになる気持ちを抑える。 『お疲れ様。お客様お見えになってるんだけど、マンパワーネットワークさん』 「はい、今行きます」 『商談室でお待ちいただくね?』 「わかりました」 穏やかな笹本の声はいつ聞いても癒されるのだが、失恋してからというもの、この癒しの声が斗真の心を切なくさせる。 ─いい加減諦めなくちゃ。女々しいな俺……。 笹本のどこが好きだったのかと問われれば、純粋で素直で騙されやすくて、仕事に励む姿は一生懸命で意地らしい。 そんなところに、知れば知るほど惹かれていった。 大人しそうで地味な見た目も好みだった。 マスクに眼鏡が笹本の基本スタイルで、それらを外せばその下には愛らしい素顔が隠されているのも魅力的だと思った。 ただ笹本に近付いた当初の動機があまりに不純過ぎて、恋は実らなかったのだけれど。 斗真は必要な書類を片手に人事部長と商談室へ移動した。 「お待たせ致しました」 商談テーブルにつくマンパワーネットワークの来訪者二人が、人事部長の声に気付いてすぐに立ち上がりこちらへ会釈し、同時に斗真も部長と共に会釈した。 その後ゆっくり顔を上げて相手の姿を確認する。 黒髪でこれといった特徴が見当たらない良くも悪くも普通の顔をした小柄な男と、その隣にはくしゅっと緩くウエーブがかかったヘアスタイルのやけに整った顔をした長身の男。 斗真はすぐに小柄な方へ視線を向けた。 ─あれ……?もしかして……。 斗真を不意に襲った既視感めいたもの。 それはかつての仲間を思い起こさせる。

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