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BEANS&. 02

 実は遊園地って初めて行った、ということをホテルのベッドの上で携帯の充電器を探しつつ零したら、やっぱり倉科クンは『え』って驚いた声を出していた。 「……え。倉科クンはあんの?」 「…………あー。どうだったかな。なんか中学あたりの頃にダチたちと行ったような行かなかったような……浅草の方に。ネズミのアレには行ったことありますよ。それははっきり覚えてますけど、よく考えたらどっちも観覧車ねーな」 「あ、そうだねないね言われてみれば。つか女の子ならまだしも男子で遊園地経験者ってあんまほら、うん、彼女さんとかがいなければないんじゃないですかね……」 「まあ、うん……そうか」  ちょっと気まずそうに視線を逸らすのがわかって、なんとなく予想してたけど嫉妬しちゃうのは悪い癖だ。  昔のことなんかどうでもいいじゃんって自分に言い聞かせても、やっぱり気になる。あーきっと倉科クンは彼女と耳付けてアトラクションに手を繋いで乗ったんだろうなって思ったら、もう駄目で、勿論オレが隠せるわけなくて、あっけなく倉科クンの腕につかまった。  やめろイケメン今日の倉科クンまじでただのイケメンだから軽率に格好良く抱きしめるのやめろうかつにときめきすぎて死ぬからやめろおねがいします。 「なんかこう、おれって若いなーって思っちゃいますね。嫉妬させてごめんね、じゃなくて、嫉妬してんの嬉しいって思っちゃうもんなぁ……」 「うぐ。くらしなくん、ちょ、迂闊にかわいいこと言うなイケメン、はなしてちょうだいいろいろしんじゃう……あとうっすら気がついてはいたんですが確認したら死にそうだったんで言わなかったアレなんだけどもしかしてコート下のお洋服もおニュウ?」 「…………若いっていうかガキっすね。浮かれ過ぎた感はあります。いや違うんす、あの、バイトの事務所の方の社長が案外買い物好きであと背格好と趣味が近いんで、服屋に行くのが割と楽しいというかー……」 「ふーん……」 「だからもう、そういうのかわいいんだって。……おれ、トキチカさんに構って構ってって、拗ねられんの、ちょう好きなの」  そんな奇特な事を言って、いつもより二割増イケメンの倉科青年はふわっと微笑んで鼻の頭にキスしてくれた。  手足長いし、身長あるし、顔結構小さいし、頭の形奇麗だし、ほんと気障な仕草がさらっと似合うくせに、最後まで格好つけないところがかわいい。格好つけてるの自分でわかってて、時々照れて今のナシって言うのもかわいい。かわいくてかわいくてオレは毎日大変だ。  倉科クンは秋口にDVD屋さんのバイトをやめて、そんでデザイン事務所だかなんだかのバイトを始めた。でもなんか、最初のところが屑みたいな上司だったらしく、珍しく煙草ばかすか吸ってて結構心配だった。  そんで、どうしてそうなったのかわかんないけど気が付いたら全然違うまた別のデザイン会社に採用されてた。最近倉科クンは、そこの社員さんとか社長さんとかの話をちょくちょくする。  オレは見たことも会ったこともないけど、カヤちゃんも名前は知ってるみたいだからちょっとは有名で結構実力がある人なんだろう。カヤちゃんって基本的に仕事の関係者って知識として覚えてる感があるから、誰の事聞いても大概教科書の資料集読んでるみたいなコメントが返ってくるんだけど、件の人は結構熱烈に倉科クンに紹介しろと迫っていた。  いい人なんだろうなーって思う。倉科クンも楽しそうだし。楽しく仕事ができるっていうのはやっぱ大事な事だ。  だからオレが些細な事に嫉妬しちゃうのってすんごい邪魔なことじゃないかなってうだうだするのにん、倉科クンはそれがかわいいとかぬかすからやっぱ変な人なんだなって思った。  だってさーオレの事好きだって言ってさ、遊園地に連れて来てくれちゃう人なんだよ? 二十六歳男と、イルミネーション見ながら手繋ぎたいとか言うんだよ? その上お風呂でセックスしたいとか言うんだよとんでもない。まったくもってとんでもない変人だ。  ぎゅうってしてくる倉科クンの新しいセーターに顔埋めて、結構な力でぎゅうぎゅうしかえしてたら、耳の後ろ撫でられて腰が引けた。 「くら、しなく、んっ……ちょ、ご飯食べた、ばっかり……っ」 「うん、そうなんですけど、なんかたくさん歩いてその上あんな恐怖の乗り物に乗っちまって、ちょっと疲れたっていうのもあって、早々に寝ちゃいそうな恐怖がありまして。元気なうちにちょっといちゃいちゃっていうかいろいろしちゃいたいなーって」 「はれんち! おみだら……っ」 「おみだらで破廉恥ですよ。だっておれトキチカさんとセックスすんの好きだもん」  もんっていうなかわいいから、と思ったけど言えなかった。ホントにこれから先倉科クンがその口調を改めたら嫌だからだ。そんなのやだ。もっとそのかわいい口調でオレをめろめろさせてほしい。  ていうかオレ、本来別にセックスなんかしなくても生きていけます派だった。……筈だ。  違うの、聞いて、言い訳聞いて。  あのね、多分今までの元彼様達って、根本的にこう、なんていうか男女のセックスの気分だったと思うわけだ。そもそもバイみたいな人が多かった。男女のセックスと、男同士のセックスって勿論いろんなとこが違う。最たるものはあれだ、やっぱその、挿入するとこだ。  男子には前立腺っていうものがあって、それで気持ち良くなれなくはない。でもそもそもそこは刺激して楽しむべく作られたものじゃないし、オンナノコの性器とは全くの別物だ。モノが違う。生殖の為に快楽を伴うあの器官とは、もう、何もかもが違う。  勝手に濡れないし、結構頑張らないとほぐれない。擦ってりゃキモチイイってわけでもない。受けてる方が楽だし気持ちいいけど、それは攻めてくれる人の努力あってのものだ。  ……ってことに倉科クンとそういうことするようになって初めて気がついた。  超絶うまいってわけでもないのは、確かだと思う。前戯とか雰囲気作りとかは多分、元彼様方の方がうまいようなきがしないでもない。でもねそういうことじゃなくてね、だからね、……気持ちよくしてくれようとするセックスって、すんごく恥ずかしくてすんごくキモチイイってことを、初めて知ってしまったわけだ。  あと倉科クンけっこうえぐい攻め方しながらごめんねとかすきとか言ってくるのがよろしくない。そんなかわいいこと言われちゃうとやめてとかだめとか言えなくなって、おれもすきってことしかわかんなくなってもっとって言っちゃうし。  なんかベッドの上のあれやこれや思い出してたらちょっと熱くなって来ちゃって、あーもうこんなね、えろえろしい人間じゃなかったのよ本当だってって誰かに言い訳しながら顔伏せてたら耳元で甘い言葉が笑った。 「……で。トキチカさん、どうします?」 「え。何、」 「ネコ耳? 目隠し? 風呂?」 「…………普通のらぶらぶえっちという選択肢は」 「じゃあもう観覧車乗らない」 「………………けち」 「むしろもう一回乗ってもいいって言ってるこの勇気をたたえてほしいっすわ。めっちゃ怖いもう窓際立ちたくねーしこえーもん。観覧車の中でキスすんのは好きだったけど。観覧車って別にテーマパークじゃなくても単品で結構ありますよね。買い物して、ちょっと良いとこで飯食って、そんで夜景と観覧車っていうデートコース、嫌い?」 「うーあーうー……ちょうやりたいなにそれ倉科クン卑怯―……」 「いや、すんげーイヤなら普通にしますけど。でもせっかくお隣さんとか気にしないでいい環境だしって思うし。ってのは言い訳か。おれがトキチカさんと特殊プレイして反応見たいだけだなコレ」  もう一度、嫌? ってきかれて、だから首を傾げるなイケメンって毒づきながらも口から出るのはイヤジャナイっていう負け宣言でした。  オレは弱い。倉科クンにめちゃ弱い。でも倉科クンだってオレに弱くて、めっちゃあーあー言いながら抱きしめられた。風呂でなんか致そうものなら茹って死んじゃいそうだ。  ちょっとえっちでも許しちゃう。だって好きだものなんて、十代女の子みたいなこと考えちゃって苦笑した。 * * *  これが、一時間前くらいの出来事でございまして。 「ぁ……ふ、くらしなく……っ、待っ、……だめ、だめだめだめだって言っ、ひゃ!?」 「……トキチカさんそればっかじゃん。これ以上待ってたらのぼせる。却下」 「だって、お湯、入っ、きちゃ……ふぁ、あわ、や……っ、ぬるぬるして、……っあ、……っ」 「うん、ぬるぬるっすね。泡ぶろっておれ初めてですわ。これいいね、トキチカさんの全部がぬるっぬるで、すんげえキモチイイし、かわいい。……こうすんの、感じる?」 「ひぅ……!? あ、やだ、……それ、あ、」  結局お風呂でのプレイを選択したオレは、備え付けの泡ぶろ入浴剤にちょっとだけテンション上がってしまってよせばいいのにねーねーこれ使っていい? なんてちょっと可愛く訊いてしまいまして一回萌えで崩れおちた倉科クンにちょっと勝った気分になっちゃいまして、そんでどうなったかと言うとあわとかふざけんなこのやろうって思いながら只今絶賛乳首をこねこねされているわけであります。  あと後ろに指入ってる。倉科クン器用ねホントね……どっちかにしてよダーリンってホント思うわ。  ぬるっとしたあわで滑って、全身がローションまみれになってるみたいな感触。  しっかり起っちゃってる乳首を親指でくりくりって捏ねまわされて、時々カリって引っ掻かれてはじかれる。乳輪には触れない。ほんとさきっぽだけ虐められてアホみたいに恥ずかしいし馬鹿みたいに腰がうずく。  腰が浮いちゃう度に、今度は中をまさぐる指を感じて変な声が出た。  そこまで前立腺とか気持ちいいもんでもないし、とか思ってたオレが馬鹿でした。めっちゃキモチイイ。めっちゃやばい。馬鹿になりそう。もっと、って腰を擦りつけちゃいそうで、すごく怖くて変な距離取っちゃって、それがバレてぐっと抱きよせられてまた中が感じちゃう。 「逃げないの。……ね、きもちいい? トキチカさん、どっちが気持ちいい?」 「……はっ、どっちって、え……っ? あっ!?」 「こっちと、」 「ふぁ、やぁ……っ動かさな、あ、」 「こっち?」  乳首を引っ掻かれて、その上甘い声を耳に注がれながら倉科クンの長い指がこりこりと中の一番いいところを押し上げる。初心者の癖についに前立腺の場所を覚えてしまったらしい。くそ……懇切丁寧に教えるんじゃなかった。  本人曰く結構えろいとの談の通り、倉科クンはあんまり照れずにがつがつ攻めてくる。言葉ではいじめないくせに身体をまさぐる手は容赦ない。オレ今まで無駄に言葉で詰られる系セックスばっかりだったから、なんかこう、優しい言葉で好き好き言われながらこんなエロいことされるの初めてで毎度毎度どうしていいかわっかんない。  縋っても逃げても倉科クンは許してくれない。これ言うまで生優しく『どっちが好きか言ってくんないとおれどっちも攻めるよ』とか言われちゃうやつだってやっと気がついて、息もうまくできない口でナカ、って答えた。 「……じゃあこっちは?」  しかしエロエロな倉科クンは甘い顔で今度はお湯の中でうっかり大変な事になってるオレのその、それ。うん。勃ってる奴の先っぽをぬるりと撫でた。  握るなら握れよばかああああそういうの変な声出ちゃうでしょ……! 「あ、や……っ、」 「トキチカさん、動いちゃってて、かんわいー……ね、きもちいい?」 「、は……っ、ぁ、ん……きもちい、から……ね、ちゃんと、擦っ……も、熱、」 「お湯がさ、ぬるぬるしてて、なんかエロいっすよね。水の音も結構、クる」  確かにそれはそうなんだけど、そんなことよりオレは視覚的な刺激がかなりやばい。  風呂ってことは一糸まとわぬ姿だ。いやベッドの上だってそうだけどそういうんじゃない。真っ暗ってわけにいかないから電気付いたままだし、そんで倉科クンは髪の毛うざいからって後頭部の上の方で結んでる。それでも頬にたれた髪の毛は濡れて貼りついてて、しかも肌とか濡れてるし、もう壮絶にエロい。  いやエロいことされてぜえはあしてんのオレの方なんだけど、なんていうかもう、もうだめだ見てるだけで死にそうになるのにこんなイケメンがオレのアレ握って擦ってるとかどう考えてもおかしい。盛大な夢な気がしてきた。  夢な気がしてきたけど実際に快感は身体に沸き起こる。  ゆるゆると扱かれて、しかも中も叩かれるように押されて、思わず倉科クンの首筋に縋りついた。お湯がびちゃびちゃ言っててすんごくエロいしあったかいしぬるぬるしてるしもうわけがわからない。 「あ……っ、あ、も、だめ、ひゃ……ナカ、すご、……くらしなく、もっと、ぎゅって、にぎって、ん……っ、ぁ、擦っ、ふ、……っ」 「もっと? ……イク?」 「いっちゃ、……あ、や、お湯……っ、おれ、中で、や……っ」 「おれしか入って無いからいいですよ。お湯の中でイっちゃっても。ていうかイってください。すんげーかわいい……ぬるぬるで、とろっとろ。腰、びくびくしてんの、めっちゃかわいい」 「ひ、ぅ……っ、く………っぁ、……ぁ、うーわー………」  耳をちょっと齧られたらたまんなくなって、うっかり本当にお湯の中でいっちゃって、なんか絶妙な罪悪感と、賢者感と、そんでもう耐えがたい羞恥心が襲ってきた。ていうかオレ今もしかして耳でイったのかな……いや中ぐにぐに押されて扱かれてたらそらイクって話だし断じて倉科クンのエロいお言葉で絶頂を迎えたなどというトンデモ乙女な状態ではないと、信じたい。うん。  流石に倉科クンにはばれていないらしく、っていうかぶっちゃけ倉科クンもそれどころじゃないらしく、すんごいエロいキスをしかけられながら最後出るまで扱かれて、指がゆっくり増やされた。  相変わらず丁寧で優しくて涙出るくらい嬉しいと同時にいっそ殺せってくらい恥ずかしい。  なんなのもう。まじで。こんな丁寧にされたら愛しか感じないから困る。エロいセックスなのに、自分の欲をぶつけたいだけじゃないんだなって思っちゃう。  そらそうだ。出したいだけなら手でやった方が楽だし気持ちいい。男なんてそんなもんだ。  それでも面倒くさい課程を踏んでセックスをする。ねえこれってすごいことだなぁ、って思ってうっかり湯の中で泣きそうになった。危ない。このお湯オレの精子入りだった。全然ロマンティックじゃない。 「……くらしなくんのえっち……」 「ふは。それ定期的に言われますけどだからおれは普通にエロいってば。トキチカさんとこういうことすんの好きだし。すんげー体力使いますけどね、それでも好きだからつい触っちゃうし。……えろいことしたいだけじゃないっての、伝わってるっしょ?」  そんなものさっきからガンガン伝わってくる。  それがまた壮絶に恥ずかしくて泣きそうになった。恥ずかしいんじゃなくて、嬉しくて。幸せであーあーしちゃう。  倉科クンとえっちなことすると体力も使うけど、感情もものすごく溢れちゃって、もうどうしようもなくなる。好きだな好きだなって思いながら、言われながら体を合わせることの幸せさにまだ慣れない。涙出るほど幸せが痛い。胸が痛い。触れたところが熱くて痛い。怖い。  怖いから手を伸ばさないなんてのはもったいないことだって、最近やっと納得できるようになった。  だから手を伸ばして、キスしたら、倉科クンの舌が優しく応えてくれた。  こんなとこでどろどろのえっちをしかけてくるくせに本当に優しくてムカつく。好きだどうしようってしか思えないしムカつく。  大丈夫? って訊かれてちょっと頷くと、倉科クンの指が抜かれて先っぽが当たった。 「……ええと、座ってる時ってどっちが楽です? 前から? 後ろから? それともベッドに戻ります……?」 「え、お風呂でやりたかったんじゃないんだ……?」 「いやなんかもうそれは結構堪能したかなって。湯ざめとのぼせる恐怖もありますし、そっちの方がトキチカさん楽でしょ? ここ硬いし痛いだろうし」 「……倉科クンエロいのか優しいのかどっちなの」 「えろくて優しい、で問題ないと思います」  ふにゃりと笑う倉科クンのほっぺたに頬を寄せて、もうこのままでいいよって言った。  そりゃ痛いだろうしベッドの方が楽だし後々のしんどさも変わるだろうけど。でもオレはなんかもう胸がいっぱいで今シャワー浴びて体拭いて、なんて時間がもったいないと思う。  ちょっとだけ甘えるようにすり寄ったら、苦笑っぽい息が聞こえて、何度目かわからないかわいいな幸せだなっていう気持ちに溺れた。 「ローションいれてないけど痛くない……?」 「多分平気……お湯が結構、うん、ぬるぬるだし、あとオレ、えっとね、あー……」 「なに?」 「……入れられたまま揺さぶられるの嫌いじゃない」 「…………トキチカさんのえっち」 「倉科クンに言われたくないですネー」  そんな事を言いながら、押し入ってくる圧迫感に息をつめた。  ……まあこの後の話は結局好きだ気持ちい幸せ泣いちゃうの繰り返しだからもういいよ、うん。倉科クンのソレは太くはないけどちょっと長めで奥に当たってそれがああだとかこうだとかそういうエグイゲイ的感想とかそういうの、ほら、うん、ちょっとアレだから。  結局すんごく疲れてふたりともぐったりしながらシャワー浴びてぐったりしすぎてる倉科クンがあんまりにもあんまりだったんで、髪の毛乾かしてあげたりとかそういう普段しないことしたけど。  髪の毛乾かしてる時にけっこうだらだら触ってきたり悪戯してきたりとか、返事がだるくてかわいいとか、そういうのも新しい発見だった。いつもはオレが甘えちゃうから、こういうのは新鮮だ。  もっと甘えてくれたらいいのに、と言った事を、倉科クンは覚えてくれているらしい。  腰に巻きついて離れないかわいい年下彼氏の髪の毛を梳かしながら、明日はどうしよっかと声をかける。無理矢理二連休取った倉科クンとオレは、明日も一日暇だ。  買い物、映画、水族館、動物園、美術館、なんでもオレは楽しいし、全部すごく楽しそうだ。外に誰かと出るっての、実はあんまり経験ない。オレの友人は薄暗いバーの付き合いばっかりで、勿論タマコさんの店とカヤちゃんを愛してるけど、こんな風に健全に外で遊ぼうと思えることが嬉しくて楽しかった。 「映画いいっすねー……最近観てないな。でもおれ、結構単館系のマイナーで面倒くっさいやつが好きだからトキチカさん暇かも……美術館に一票かな。今何やってんのか知らんけど、あ、科学博物館でもいいです。おれあそこ結構好き」 「オレも好き。海藻のフロアとか超好き」 「……トキチカさんキノコ類とか好きそう」 「なんでばれてんの!?」  セックスの後にそんなばかみたいな会話ができるのって、いいよなぁって、ピンクの髪の毛を梳きながら笑った。  好きって何回言ったかなぁ。  でも、これからもきっと何回も言うだろうなぁ。 end

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