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黒に囚われる
如月一翔(きさらぎかずと)は人生最大のピンチに見舞われていた。
事の発端は両親が遺した莫大な借金だった。借金を払えなかった一翔は、ある日、自宅に押し掛けてきた屈強な黒色のスーツを着込んだ男たちに、抵抗虚しく捕まってしまい、身売りに出されてしまった。いわゆる人間が人間を買ったり売ったりする人身売買が、現代で行われているとは思いもよらなかった。現代の闇を見てしまった瞬間だった。
そして、最悪な事に、同年代よりも華奢な身体つきで童顔の一翔の価値は高く、買おうとする富裕層が後を絶たなかった。いやらしい笑みを浮かべる男性に、一翔は買われた。これから自分の人生はどうなってしまうのだろうかと不安に思っていると、目隠しをされて、睡眠薬を嗅がされて、意識を手放してしまったのだった。
*****
次に一翔が目を覚ましたのは、簡素なベッドの上だった。薄暗い雰囲気の部屋で、鉄製の扉が一つだけあった。他には、大きな姿見と簡素なトイレだけがある牢屋の様な印象を受けた。
(ここは一体、何処だろう…?)
疑問に思いながらも、立ち上がって周囲を確認しようとして、一翔は自分の格好に気付いてしまった。両手には手枷がされていて、簡素なベッドの脚に繋がられている状態だった。また、大きいサイズの白色のワイシャツだけしか羽織っておらず、下着すらもつけていない状態で、一翔は思わず羞恥心が沸いた。スースーとして肌寒く感じた。
すると、部屋の外からコツ、コツと靴音が聞こえてきた。思わず、一翔は身構えて鉄製の扉を凝視する。そうして、鉄製の扉がガチャリと鈍い音を立てながら開いた。入って来たのは、一人の男性だった。ふわふわとした黒髪に、緋色の切れ長の瞳には黒渕の眼鏡をかけていた。白色の上着と黒色のズボンを着込み、黒色のコートを羽織っている端正な顔立ちの青年だった。青年の手にはノートパソコンと大きなトランクケースを持っていた。
「あの、あなたは一体……?」
突然、入って来た青年に対して、一翔は恐怖心を押し殺して話しかけた。けれど、青年は一翔を一瞥すると、鼻で笑う。
「俺は調教師の黒瀬(くろせ)だ」
「調教、師……?」
聞き慣れない単語に妙な胸騒ぎを覚えて、一翔は少しずつ後退りをして距離を取ろうとする。けれど、黒瀬と名乗った青年は嘲笑うかの様に、一翔につかつかと近付いてきて、見下ろしてきた。緋色の瞳は冷たい雰囲気を放ちながらも、場違いに綺麗だと思い、一翔は背筋がぞくりとしたのだった。
「お前を【性奴隷】に調教しろとの依頼があってな……。確かにお前、男にしては可愛らしい顔をしているな」
調教師と名乗った黒瀬は無遠慮に手を伸ばすと、一翔の柔らかな色白の頬に触れる。突然、触れられて一翔は身動きが取れなかった。まるで、蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。黒瀬は、怯えて動けないでいる一翔の様子に低く笑いを零すと、ポケットから何かを取り出した。それは、白色の錠剤のようなものだった。一粒だけ黒瀬が錠剤を取ると、突然、一翔の鼻をつまんで、口の中に錠剤を飲ませようとしたのだった。
「んっ!!!」
黒瀬の細長い指が口内に入ってきて、錠剤を飲ませようとした。一翔は首を横に振っていやいやと意思表示を示すが、聞き入れてもらえない。一瞬、黒瀬の指を噛めばいいかと思った。けれど、黒瀬の緋色の瞳を見て、一翔は身体がすくみ上ってしまう。まるで肉食獣のような、捕食者の目をしていた。この青年に逆らったら痛い目に遭う。そんな直感が過り、本能で感じ取った一翔はされるがままに、一粒の錠剤をごくりと飲み込んでしまった。白色の錠剤は、甘ったるい砂糖の味がした。その一翔の様子を、満足そうに笑みを浮かべながら黒瀬は口を開く。
「良い子だな。……もし、指を噛んでいたら、痛い目を遭わせる所だった」
痛いのは嫌だろうと言いたげに緋色の瞳で見つめるので、一翔はびくびくと身体を震わせながら、青褪めさせながら、こくこくと頷いた。そうして、黒瀬はまた錠剤を一粒取り出すと、一翔の口元に運んできては言い放つのだった。
「飲め」
命令口調の黒瀬に、一翔はびくりと身体を震わせる。おずおずとしながらも、今、黒瀬に逆らったら、もっとひどい目に遭うと考え、素直に指示に従うことにしたのだった。ゆっくりと口を開けて、一粒の錠剤を飲み込んだ。一翔が一粒の錠剤を飲み込むのを確認する度に、青年は一粒の錠剤を取り出して、一翔の口元に運ぶのだった。
その行為を何回か繰り返していると、一翔の身体に変化が起こる。先ほどまで肌寒く感じていたはずの身体が、徐々に熱を持ち始めていた。はぁと息を吐く度に艶っぽく、額には汗が滲み出ていた。ぞくぞくと神経が犯されるような疼きが身体の中に支配する。思考が熱で焼き切れそうになりながら、くらくらとしながら一翔は黒瀬に対して、潤んだ黒色の瞳で見上げるのだった。青年は、悪い笑みを浮かべながら告げる。
「お前が飲んだのは媚薬だ。性奴隷として調教するには手っ取り早い」
黒瀬が徐に一翔の頬に触れた瞬間、一翔の身体はびくんと跳ねる。黒瀬に触れられるだけで、一翔の身体の中を快楽の刺激が走り回る。初めての感覚に、一翔は大いに戸惑った。
「あ、はぁ……、んんっ!」
「効いている様だな。……それとも、お前は随分と感じやすい体質かもな」
「違っ……!そん、なこ、と……ひ、ぅっ!!」
暗に淫乱だと言われて一翔はきっと睨み付けるが、すぐさま黒瀬に触れられてあられもない声を漏らす。はぁと息を吐く姿は、とても扇情的に映り、まるで男をさそう娼婦の様だ。黒瀬は興奮した様に唇を舐めると、一翔を簡素なベッドの上に押し倒す。そうして、一翔の閉じられていたワイシャツのボタンに手をかけた。ぷち、ぷちと一つずつ丁寧に開けていくと、一翔の色白の肌が、媚薬のせいで薄紅色に染まっていて、一翔の自身はゆるゆると勃起していて、卑猥に映った。
「や、ぁだ……!み、見ないでっ、くださ、いっ……!」
同性だが、自分の裸体をまじまじと見られることに羞恥心が沸いて、潤んだ瞳でいやいやと訴える。そんな初々しく生娘な一翔の仕草が、男を煽るのだと黒瀬は密かに思った。黒瀬の手がそっと一翔の身体をなぞるように撫でる。
「ゃ、あっ!だ、だめっ!さ、さわらな、いで……っ!」
面白いぐらいに一翔の身体は大きく仰け反らせながら、甘い喘ぎ声を漏らす。
「傷跡も全くの無い綺麗な身体だ」
黒瀬は目を細めながら、感心した様に言葉を漏らす。媚薬のせいで、全身が性感帯に変えられた一翔の黒色の瞳からは、快楽の刺激に耐えられないのか涙が一筋零れた。一翔の乳首は薄紅色に色付いていて、触られてもいないのにぷっくりと膨らんでいて、果実の様に美味しそうに見える。黒瀬は、一翔の身体を満足そうに見ると簡素なベッドから離れて、トランクケースの中をごそごそと取り出した。取り出されたのはピンク色の小型の卵のような形をしたものだった。一翔の両乳首に卵の様な形をしたものを、テープで固定して取れない様に取り付ける。冷たい機械の感触に、一翔は身震いした。
「な、なんです、か……こ、れ……?」
「ローターという道具だ。これを、こう使う」
突然、身体に取りつけられて戸惑う一翔を見下ろしながら、黒瀬は残酷にも悪い笑みを浮かべる。そうして、ゆっくりとスイッチを入れた。
「ひぅううううううううううっ!!!」
一翔の両乳首に取りつけられたローターが振動を開始する。低い羽虫の様な音が鳴り響いたかと思うと、ぶるぶると震えるローターの振動が乳首にあたり、刺激されてしまう。一翔の身体中に強い快楽の刺激が駆け巡る。
「や、だっ、やだっ!と、とってくだ、さっ……!!!」
「駄目だ。お前が達するまで、外さない」
黒瀬の言葉を聞いた一翔は絶望に目を見開きながら、無慈悲に与えられる快楽に悶え苦しむのだった。振動するローターを取りたくても、両手は手枷をされていて取る事ができずに、もどかしい。一翔が強制的に与えられる快楽に身悶えていると、黒瀬はさらにトランクケースの中から、男性器を模して造られたバイブを取り出した。一翔は顔を真っ赤に染まらせながら、大きく目を見開いて見てしまう。初々しい反応をする一翔に対して、相変わらず悪い笑みを浮かべる。
「これは、バイブと言われる道具だ」
黒瀬はローションにバイブをまとわせると、一翔の閉じられていた後孔にずぷりと挿入するのだった。
「ゃあああああああっ!!!」
冷たい機械の感触に思わず身震いしてしまう。けれど、媚薬のせいだろうか、バイブをいとも簡単にのみこんでしまい、きゅうきゅうと締め付けてしまっていた。一翔の黒色の瞳からは、次々に与えられる快楽の刺激に耐え切れず、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「……お前のその顔、ひどく欲情する」
低く欲情した声を出しながら、黒瀬はバイブをぐりぐりと動かしていき、一翔の体内を犯していく。グリっと抉る様にバイブを動かしていくと、一瞬で思考が飛び、一翔の喉からは悲鳴が漏れ出る。
「ひっ、ぁあああああっ!!!」
「ここがお前の良い所か」
男でも感じる事の出来る一翔の前立腺を見つけた青年は、淡々とした口調で口角を上げながら、バイブを使い責め立てていく。がくがくと腰が痙攣していき、一翔の弱点を責め続ける。両乳首につけられたローターも同じ振動を震わせながら刺激してくるので、たまったものじゃなかった。一翔は、いっぱいいっぱいになりながら、そろそろ限界だと悟る。
「イくっ、イっちゃうぅぅぅぅうっ!!!」
悲鳴を上げる様に喘ぎ声を出すと、一翔の自身からは白濁が撒き散らされた。ぜぇぜぇと荒い呼吸を吐いて、射精してしまった事に、達かされてしまった事に、ショックを受けるが、同時にこれで責め苦が終わりだと一翔は安心した。けれど、その予想は裏切られることとなった。
「ひっ、ぅうううううっ!!!」
黒瀬がバイブとローターの振動を最大にしたのだった。一翔は仰け反りながら、与えられる快楽の刺激に耐える。涙を流しながら一翔は、黒瀬の顔を見つめた。これで、終わりでないのかと訴える様に見つめると、黒瀬は嘲笑して一翔の頬を撫でる。
「これで終わりな訳無いだろ?」
残酷な言葉を告げると、黒瀬は簡素なベッドから降りると鉄製の扉の方までつかつかと歩いて行く。その姿に、一翔は目を見開いた。まさか、このまま放置されるのではないかという不安と恐怖が蘇る。
「やっ、やだっ……!お、願いっ!ぬ、抜いて……っ!!行かないでっ……!!」
いやいやと子供がむずがるように、一翔は黒瀬に声を掛ける。けれど、聞く耳を持たないのか鉄製の扉に手を掛ける。そうして、一翔の方に振り返ると、悪い笑みを浮かべて残酷に宣言をするのだった。
「一時間後に来る。良い子で待っていろ」
「そ、んな……っ、ひぃ、ぅぅぅううう!!!」
ばたんと、鉄製の扉が無慈悲にも閉められたのだった。
*****
もうどのくらいの時間が経ったのか、一翔の中では分からなくなっていた。両乳首につけられたローターと、後孔に埋め込まれたバイブの強い快楽の刺激を始終与えられて、気が狂いそうになっていた。ぐずぐずに蕩け切った表情は、唇からは涎がたれて、瞳からは涙が零れ落ちていた。一翔の自身からは、ぴゅるぴゅると力無く精液が吐き出される。まるで失禁してしまっているかのように思えて、羞恥心に顔が紅く染まるのだった。道具による責め苦に一翔が限界を迎えようとしていた時だった。
バタリと、鉄製の扉が開く音が聞こえた。弱弱しく顔を向けると、そこには黒瀬が立っていたのだった。黒瀬は、つかつかと歩いて一翔の元へ行く。そうして、一翔の頭を優しい手つきで撫でるのだった。
「良い子で待っていて、えらいな」
黒瀬にひどい事をされているはずなのに、黒瀬に褒められて何処か嬉しい気持ちになる一翔がいて困惑したのだった。黒瀬は、一翔の両乳首をいじめていたローターのテープを取ると外したのだった。ローターでいじめられた乳首は紅く色付いてぷっくりと膨らんでしまっていた。一翔の後孔に挿入したバイブを一気に引っこ抜く。
「んんっ!」
バイブを引っこ抜かれた瞬間、一翔は甘い声を出してしまう。とろとろに蕩け切った後孔は、いやらしくてくぱぁとあいて、ひくひくと引くついて物欲しそうに蠢いていた。
(今度こそ……終わった……?)
ぼんやりとした思考で黒瀬を眺めていると、黒瀬は簡素なベッドの上に座り込んだ。そうして、一翔の身体を持ちあげると黒瀬の上に座らせた。黒瀬の行動に首を傾げていたが、青年の昂りがズボン越しに押しあてられる力強い感触に、一翔は息を飲んだ。
「……抱かない主義だが、気が変わった」
背後から腕を回して一翔を抱き寄せて、耳元で隠しきれない欲情し切った声で黒瀬は囁いた。
「ま、待ってっ、くだ、さい……っ!」
一翔はいやいやと力無く首を横に振った。青年に抱かれてしまったら、もう二度と、後に戻れなくなってしまう恐怖を感じた。けれど、一翔の言葉を却下するように、黒瀬はカチャカチャと服を寛げると、焼けつくような熱い塊を一翔の後孔に擦り付ける。そうして、ぐちゅりと散々にバイブで慣らされ、拡げられた一翔の後孔はいとも簡単に黒瀬の自身を飲み込んだ。ベッドに腰掛けたままに、後ろから挿入された黒瀬の自身は、一翔の体内を抉り、犯していく。
「ゃ、あああああああああっ!!!」
バイブよりも圧倒的な質量と熱さに異物感を感じるが、すぐに快楽へと変わる。自分の体重でより深く結合してしまい、身体が反応してしまい仰け反ってしまう。太ももをしっかりと掴まれて、まるで、子供にトイレをさせるかのような恥ずかしい格好に、一翔は羞恥心で顔を紅く染まらせる。黒瀬が律動して、後ろか突き上げられる度に、一翔の自身からは力無く精液が吐き出される。
「あっ、や、ぁ……も、あん!ら、らめっ……!!」
「お前の中は、温かくて、気持ち良いな」
興奮した声音で黒瀬は一翔の耳元で囁いて、耳朶を甘く噛んだり耳の中を舐めるのだった。ぴちゃぴちゃと耳を犯され、ぐちゅぐちゅと後孔を犯される。ふと、一翔の目の前には、大きな姿見がある事に気付いた。姿見に映る自分の姿は、見られたものでは無かった。顔を紅く染まらせながら、快楽を享受するかのように、とろとろに蕩け切った瞳に、唇からは唾液が零れ落ちる。紅く染まったぷっくりと膨らんだ乳首に、力無く精液が吐き出される一翔の自身。そして、一翔の後孔はおいしそうに黒瀬の自身を飲み込んで、きゅうきゅうと締め付けている。そんな淫靡な姿の自分に羞恥心が沸いて、一翔は顔を背けようとした。けれど、それに気付いた黒瀬が一翔の顎を持って固定させる。
「見ろ。……お前は、とても淫乱だ。素質があるようだな」
「ひっ、ゃ、あ!ち、ちが……っ!!」
ぼろぼろと涙を零れ落とす一翔の姿は、可哀想だが扇情的で可愛く映る。黒瀬は一翔をさらに強く抱き寄せて密着させる。繋がっている結合部が深く密着して、一翔を責め立てるのだった。そうして、一翔の体内でさらに質量を増した黒瀬の自身に、一翔は抵抗しようとするが、黒瀬に力強く押さえ付けられる。そして、一翔の顔を向けさせると、黒瀬は一翔の柔らかい唇に貪る様に深い口付けをする。
「んんんっ!!!!」
初めてされる深い口付けに酔いしれていると、一翔の最奥を突いた。その瞬間、どくどくと溢れかえる熱い感触を一翔の体内で感じ取り、射精されてしまった事を悟る。けれど、どこか満たされている一翔がいた。そうして、意識を手放すのだった。
*****
「……俺が買い取る。金は振り込んでおく……ああ、そうしてくれ。じゃあな」
電話を終えると、スマホの電源を切った。調教師の黒瀬は、ちらりと簡素なベッドの上で深い眠りに着いている一翔を見る。同年代に比べて、華奢な身体つきで、可愛らしい童顔で、快楽に弱い淫乱な人間。調教師の仕事を長年続けていて、初めて欲しいと思った相手だ。そっと傍に近寄って、簡素なベッドに腰掛ける。優しい手つきで一翔の頭を撫でると、一翔は「んっ」と声を漏らしながら、気持ちよさそうにするのだった。そうして、黒瀬はトランクケースから、そっと黒色の首輪をとると、一翔の首にかちゃりと着けた。
(これで、一翔は俺のものだ)
悪い笑みを浮かべながらも、一翔の身体にいろいろな快楽を覚え込ませる算段を立てていた。これからの生活を、黒瀬は思い描くのだった。
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