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第1話 健康診断
「さむっ!」
この寒さの中じゃ体を丸めて歩くのは仕方ないでしょう?
「ねえ、なんか猫背じゃない?」そう言われましたが、それは断る口実ですよね。どうせお呼びじゃないんですよね。
この前の合コンも数合わせに呼ばれただけだし。
相変わらず安定のハズレくじ。いつもの事ですしね。
「あ、斎藤。この前言ってた健康診断な、明日の朝8時半に駅前。診療所のバンが迎えに来るから。小さな診療所だけどドクターが綺麗な人だから。楽しんで来いよ」
そう店長に言われました。ドクターが美人だと楽しいのかな。それより早く終わらせてもらって、大学のラウンジで何もしないでぼんやり時間をつぶしていた方がましかも。
あ、そういえば田中君…最近彼女出来たって…。じゃあ本当に一人ぼっちなの?
そんな事を考えながらぼんやりと駅の前。あれ、もう来てるのかな?あの黒いバンかな。近づくと車の前に立っていた男の人が声をかけてきました。
「マサキさんですか?」
ん?下の名前で呼ばれました。親近感でも売りにした診療所なのかな。
「はい、そうです」
「遅かったので逃げられたのかと思いましたよ。みんな待たせてるんだから早く乗ってください」
えっと?まだ八時ですが、店長時間を間違えてたとか?僕が聞き間違えたとか?……でも健康診断が嫌で逃げる人とかいるのかな?
バンに乗り込むと同時に、ドアが閉まり勢いよく走り出しました。連れて行かれたのは少し外れにあるマンション。この中に診療所があるのかな?
店長、小さい診療所って言ってたけれど、マンションの中の一室って小さすぎませんか?
「急いてくださいね。もう時間押してるんだから、明るいうちに撮らないと」
えっと……明るいうちに撮る。レントゲンですか?あれ、レントゲン室っていつでも暗いはずですよね。
マンションの一室、部屋のドアを開けると白衣の綺麗な……男性!?
店長……綺麗なドクターって男の人…だったのですか?
「初めまして、香月と言います。マサキ君はこういうの初めて?」
いや、健康診断初めてなんて有り得ませんよね。
「いえ、大学に入ってからは初めてですけど」
「そう?良かった。意外とハードだから心配してたよ」
すっと手をとられて部屋へと連れて行かれました。意外とハード?何がでしょう?真っ白い部屋にはベッドが中心に一台。そこに医療器具らしきものがワゴンに乗って置いてあります。
そこまでは、理解出来ますが……なぜにカメラが?
レフ版にライト??
医療ミスをなくすために撮影しますって……そんなわけないでしょう。
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